虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

神様談



 誰もいない白い世界。
 人間が自発的に足を踏み入れることのないその場所で、とある存在たちが自分たちが見守る存在について話し合う。

「──ねえ、何がどうなっているの?」

「儂にも分からん」

「ほんの少し目を離していただけで、まさかここまでやっているとは……」

「うむ。予想外であった」

 彼らはある休人の力を解放するため、他の神々の元を巡っていた。
 ──彼らの正体は神、その中でも上位の地位に君臨する創造神と死神であった。

「◆◆◆◆、は僕の指示で観る暇もない程働いているし……誰か把握していないかな?」

「だから言ったではないか。わざわざ二人で行く必要もないと」

「……だって、そんなことしたらツクル君の活躍を独り占めする気だったでしょ? そんなのつまんないじゃないか」

「ハァ……いつもお前は、そうして他者を巻き込んで動く。よくもまあ、トリックスターとしての一面を有さないものだ」

 あらゆる者たちの逸話に協力し、武器や知恵を授けてきた創造神。
 語られることのない活躍を思い返した死神は、ふとそんなことを呟く。

「まあ、それがお前の本質だ。それよりも、ツクルの動向が分かったぞ」

「本当!? いやー、神像に祈ってくれれば記録が読み込めるんだけど、最近の分が無くて困ってたんだよー。それで、ツクル君があの魔道具の街に向かった後の情報は?」

「……そこまで把握しておれば、いずれ分かることだろうに」

「情報はいつでも、新鮮なものに限るのさ」

 一度何かを決めた創造神を止めることは、決してできないと経験から知っているため、死神はため息を吐いてから情報を伝える。
 二つの『アンヤク街』での活動、そして立ち回り……さまざまな強者との接触で得た、新たな能力やアイテム。

「──あくまで加護を通じて、ツクルの死から読み取ったものだ。あの世界での出来事は分からない」

「そう! さすがツクル君だ! いやー、彼の活躍を聴いていると、何でもかんでも『さすがご主人様!』と言っている奴隷の気持ちが分かる気がするよ。凄い、としか評することができないんだね」

「……それで、お前はどうする」

「どうするって?」

 真剣そうな表情で、死神は問いかける。
 創造神は笑顔の浮かべたまま、死神が語るのを待つ。

「すでに【救星者】だけでなく、【勇者】や【魔王】の資格まで得ている。まさか、今代の【魔王】との相性があそこまで好いとは誰も思わん」

「それでこそ、ツクル君だよね。相手に自分の虚弱能力値をコピーさせて、文字通り瞬殺させたんだからさ」

「話は着けているのだろう。多少強引になろうと、動かねばならない」

「……そう、だね。それじゃあ、お願いするよ──◆◆◆◆」

 ビクッと反応を示す◆◆◆◆。
 神々の選択が、今ツクルへ向かう。


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