虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
革命 その17
「英雄様たちもいなくなりましたし、少しばかり本音で語り合いましょう」
『嘘偽りですべてを隠している人が、そんな台詞を言うんだ』
「皆様あえて見逃してくださるのですし、それは気にせずともよいのでは?」
『……いい加減にやめて。殺したくなる』
剣呑な瞳を向けられ、両手を上げる。
ステータスは完全に偽装し、表情にも若干の補正が入っている俺は……たしかに全身を嘘で塗り固めているのか。
「──俺を殺す依頼もあるんだろ? なら、どうしてこれまで殺さなかった?」
『依頼主は、ただ殺すんじゃダメだと言っていたからだよ。それに、私もそれじゃあダメだと学んだ』
「いいじゃないか、それでも別に。俺は死んで狙われなくてWin、【暗殺王】は依頼をこなせてWin。それでいいだろ」
暗殺なんて、バカバカしい。
何度死んでも蘇るプレイヤーに、それこそ意味なんてないだろうに。
『この街で嗅ぎまわりすぎた、というのも理由かな? 恨まれることが多いんだね』
「……ハァ。それで、どうやって殺す?」
『もちろん──封印するよ』
死に戻りがある休み人を縛る方法などいくらでも存在する。
もちろん、対価を支払えばちゃんと脱出できるところはゲームっぽいが、その対価というのがえげつないので選ぶ者は少ない。
そして今、その一つである封印を行うと目の前の暗殺者は告げる。
「どうやって? とは、言わないけどさ。本当に無駄になるからな。意味もないし、諦めることを勧めるぞ」
『……ずいぶんとまあ、余裕なんだね。これでも王の地位に就くぐらい、暗殺を重ねているんだよ』
「それで、俺にどう関係する? 経験があろうがなかろうが、絶対に殺し尽くすことはできない。だからこそ、俺は『超越者』の名を冠することになった」
死神様、元気にしているだろうか。
加護を持っているんだから、通信できるみたいなシステムは無いのか?
……神代魔道具の中に、そういうものが無いか気になるな。
『──その驕りこそが、死因。そのまま死を受け入れて』
なんてことを考えていれば、目の前を覆い尽くすように不透明な液体が飛び散る。
対処が間に合わず、俺はその液体を全身で浴びてしまう。
「けどさ、暗殺者の真似ごとをするスライムとは……属性を盛りに盛ってるよな」
『やっぱり気づいてた。でも、ならどうして対抗策を用意しなかった?』
「だって必要ないだろ? それに【暗殺王】がスライムだとしても、俺に困ることなんて一つもないし」
そう、【暗殺王】の正体はスライムだ。
とっくに採取した細胞の解析は済んでいたので、『SEBAS』が正体を暴いていた。
最上位の、【魔王】と同ランク級の魔物らしいんだけど……何をしているんだろうな?
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