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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

革命 その09



「そいのそいのそいっと、サクサクサクサク釘を刺せーっと」

 歌に意味なんてないし、考えてもいない。
 適当な歌を奏でながら、白い人形へ釘を突き刺していく。
 縫い止めるっていうのであれば、縫い針の方がいいと思うんだが……まだ製作していないからな。

(コスパが悪いんだよなー。だからモルメスみたいに多く用意できなかったし、ちゃんと完成させないと)

 考えずに目の前の人形に釘を刺すだけなので、思考をゆっくりと行うことができる。
 ……釘は単純に高級な素材を注ぎ込むわけではなく、レアな魔物の素材やそれを媒介にした術式を組み込むことでようやく一本だ。

「これまでの素材は培養できるし……さて、時間がかかるな」

 そうやって八本の釘を用意したわけだが、それでも八体の人形しか止められない。
 一秒に一体止められたとしても、無限に増やすことができる人形はそれ以上の速度で増産されていく。

「……奥に行きますか」

 英雄たちへのアピールも含め、少しばかり奮闘してしまった。
 だが別に、それはするべきことではなくしたかったこと──要するに飽きた。

(『SEBAS』、ドローンは?)

《すでに所定の位置へ》

「──サクサクっと」

 これまでは、あまり足を動かさずにその場での対処で済ませていた。
 しかし、それを行う必要は終わった──これまで以上に苛烈な攻撃を受けようと、真っすぐに目的地へ向けて歩き出す。

 どれだけ阻もうとしても、死してなお進む兵の行進を止めることはできない。
 当然、HPが0と1の間を行ったり来たりとしているが、それは俺にとって得でしかないのだから世の中は理不尽だ。

「刺殺、銃殺、焼殺……溺死に凍死、感電死ときたもんだ。殺しのデパートメントか?」

 そして、『死天』の力が死亡理由をアイテムとして具現化する。
 今回使うことはないのだが、さすが神代魔道具なだけあって……多様なアイテムが生産できるな。

 これが古いゲームであれば、数字がカンストするぐらいに溜め込んだ。
 そのうち死の収集家的な、いかにも悪役っぽいご職業に就職するかもしれない。

「──推爆」

 まどろっこしく感じたので、昔手に入れた爆死のアイテムの改良品を使用する。
 背中の辺りで爆風が巻き起こり、俺ごと人形を吹き飛ばしていく。

「よいしょっと……はい、到着」

 数回の爆発が終わったとき、俺の肉体は人形の生産工場へ辿り着いた。
 今も人形は生まれ続けている──すでに中は把握している。
 改良と改造を始めるとしますか。


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