虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
革命 その08
「不可解な権能だ……『超越者』という存在は、皆が皆あのようなことができるのか」
『どうだろうね。でも、少なくともこの街にアレができる人はいないだろうね』
「やはり、彼だけが特異だというわけか。あれは、死んでいるのか?」
別室でツクルの戦いを観測する三人の者。
英雄とその従者、そして【暗殺王】はその力を調べていた。
『間違いないね。私の能力は、相手が死んだかどうかを視ることができる──何度も何度も死んで、それでも蘇っている』
「『生者』、とはそういったことか。生き続けるのではなく、生と死を超越した存在。なるほど、どうりで死なないわけだ」
『すでに死んでいるわけだしね』
多様な方法で殺されるツクルだが、傍から観れば何事もなかったかのように動きだす。
だが実際は燐光が放たれ、休人の特権である死に戻りを行っている。
それを見ることができないため、その程度の推測しか行えない。
真実を知る者は、まだ誰もいない。
やがてツクルは、ポケットの中から一つのアイテムを取りだす。
「あれは……なんだ? メリンダ、アレが何か分かるか?」
英雄は連れてきた自身の従者、そして親友である少女に問いかける。
自身の足りないモノを埋めてくれる、知的な友人だった。
「…………」
『私も教えてほしいな。ねえ、言ってみてくれないかな?』
「……形を取り繕った、魔道具よ。アレは説明ができない、高い技術力の塊。貴方の旗と同じ……いえ、それ以上に」
「何っ!? ……あれが、そうなのか」
『ふーん。あれって、釘だよね?』
◆ □ ◆ □ ◆
「さすが神代魔道具の守護兵。俺もこれを使わなきゃいけなくなったな」
命が無いモノに、『死天』で生成したアイテムを使っても意味がない……いや、あれは個人用のアイテムだから。
複数を相手にするのであれば、また別の用途で作られたアイテムを使用するべき。
「そして、今回はこの釘というわけだ」
モルメスのように指の間に挟んだ八本の釘は、凄まじい魔力を内包している。
「さてさて、使えるかな……よいしょっと」
ちょうど俺を殺そうと攻めてくる一体の人形に、釘をプスリと突き刺す。
俺の筋力値はそれを通すだけの数値ではないが、それでも称号『貧弱な武力』によって最低1はダメージを与えられる。
「つまり、薄皮一枚程度には刺すことができるわけで……よし、成功だ」
釘を俺は、物と物とを繋ぎとめる物だと定義付けた。
そしてその概念を極限まで高め、最高級の素材を用いて釘を作り……万物との接合を可能とする釘が生まれたわけだ。
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