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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

闇厄街 その09



 密偵は拷問されているだろうが、俺は構わずに行動するだけだ。

「決起までの時間は変わるのですか?」

「変わらない、というより変えられない……入念に用意した計画であり、いっさいの変更ができないのだ」

「入念な作戦、というのも大変なんですね。では、私はそれまで休んでいますかな」

「……まだ居るつもりか。君のやりたかったことは、商人として居ることだけじゃなかったのか?」

 ふっふっふ、俺は諦めない男だ。
 たとえ嫌がられようと、契約を得なければならないこともあるんだよ。

「まだまだ売れる商品はありますからね。必要に応じて、それらを紹介しますよ。どれだけの商品を、買ってもらえるんでしょうか。楽しみですよ」

「好きにしろ……」

 呆れたように告げた英雄だが、それ自体が言質になることを理解しているのだろうか。
 大人の腐りきった考え方であればこそ、俺もそんな考え方をしてしまうのだが。



 そういった事情もあり、革命の実行まではふらふらと彷徨うことにしてみた。
 とっくに『SEBAS』がドローンを使って探査しているが、それでも実地で歩くことも時には必要だ。

「まあ、街でも出店は並んでないのか……」

《英雄たちは集めた食料を分け与えておりますので、わざわざ金銭を使用する必要が無いのでしょう。用途はあくまで、商人たちとの売買のためだけだと思われます》

「なるほどな、それでか。なら結局、楽しむためには別の何かを見つける必要があるみたいだな」

 一度通った際から分かっていたことだが、この街は活気というものが欠けている。
 それでも人はこの街で生き、死んでいく。
 街をウロウロするものなんて、英雄率いる革命軍しかいない。

「まあ、そもそも酒を飲んで飯を食らう以外に欲を満たすのは難しいか。性欲なら、見た感じ満たせそうだが……絶対にしないし」

 ルリという妻がいるのに、どうしてこっちでそれを満たす必要があるのか。
 R18の倫理云々があるので、いちおうこのゲームでの四十八手は防がれている。

 ……だが、裏技はいつの世も存在した。
 特殊な能力や存在であれば、それを無効化してしまう。

 血や吐瀉物なども本来であれば、テレビのようにキラキラな加工がされる──しかし、一部の種族やスキルの持ち主にはそのままの状態で映るのだ。

「……あっ、でも、性病対策のポーションでも売れば儲かるかな? おまけに薄い膜でも用意すれば、もっと売れるか」

 やりたいことが膨らむな……考えてることはある意味最悪だけど。
 一つ一つを頭の中で考察しながら、街をふらふらと歩きだす。


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