虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
闇厄街 その07
「──とまあ、ここまでは冗談です」
「おい、冗談とはどういうことだ」
「私は情報ギルドに向かい、いくつかの有意義な情報を手に入れました。それはとても有意義なもので、貴方がたの役に立ちます」
タブレットを操作して得た、ごくごくシンプルな情報をいくつか提示しよう。
「英雄様の考えた蜂起の内、すでに知られている箇所」
「っ……!」
「どうやら間者は、身近にいるようですね」
金に負けたか、それともまた別の方法で情報を吐かされたのかは分からない。
驚きようからするに、そうした作戦はかなり上位の者たちにしか知られていないのか。
「話す場所は考えていますか? 【情報王】などは盗聴を防ぐ部屋を持っていましたが」
「……防いでいる。商人からその用途の魔道具を購入した」
商人が持っている? この街でそんなレアな魔道具を所持するということは、かなりレアな商品を売っているのだろう。
だが、それが正規の品かは分からない。
だからこそ、問題が起きた。
「それを見せてもらうことは?」
「別の部屋だ。だが、それを見せるというのは少し……」
「ただでさえ、情報の流出を許してしまった魔道具を使うつもりですか? 私であれば、別の魔道具を……流出を拒み、密偵を見つけ出すことができる魔道具を用意できますよ」
それこそが俺──というより:DIY:の持ち主ができる最大限だ。
盗聴や盗聴防止の魔道具なら、『魔道具適正0(笑)』に作り方が載っていた。
すでに作成してあるし、もっと言えば改良版の作成にも成功している。
「……本当か?」
「お値段の方は勉強させてもらいますよ。貴方がたの活動には、さまざまなアイテムが必要となるでしょう。そこに商人として関わらせていただける──なんと素晴らしい!」
「胡散臭いな」
「そんなこと言わないでください。先ほども言ったように、私は叶えたい幸福があってそのために動いている身です。決して、戦場に死を振り撒く商人にだけはなりたくないと感じています」
そんなことして、ルリやショウ、マイに見つかったらどう弁護すればいいんだか!
オンゲーでそんなことをやらされたこともあるにはあるが、特段好きになれなかったからそう思っているんだろう。
「商人の言葉は嘘偽りが少ないですよ。信頼が減るだけの行為をするほど、私たちは落ちぶれてはいませんので」
「今、少ないと言ったな? 無いではなく」
「……では、ご案内していただけますか? その魔道具がある場所に」
「ちゃんと答えろ!」
人を傷つけない嘘も時には必要だし。
本当のことしか言えない人間なんて、それはもう聖人だからな。
物凄く怪しげな目で俺を睨む英雄を見ながら、そんなことを思った。
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