虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
闇厄街 その01
「何も悪いことは思っていませんよ。ただ、噂に聞いた英雄様がたが、どのようなことをなさっているかが気になったのですよ」
「……本当に、自身が怪しくないと思っているのか? いきなりそんなことを言われて、受け入れるとでも?」
「なら、前回プレゼントしたチップの方、回収させてもらいますが……おや、どうしてそのような苦痛に満ちた顔を?」
どれだけ義の心を秘めた行為であろうと、金が無ければできないこともある。
おそらく、もう使っちゃったんだろうな。
「これは独り言なんですが、人が差し出したお金を奪うだけ奪って、お礼の一つもしない英雄は……どうなんでしょうね?」
「あ、あれは君が自分から置いていった物では──」
「……そうですね。私は信用されていませんでしたか。私がカジノで手に入れたお金のすべてを持っていって、貴方がたはそれでもなお信じてくれませんでしたか。嗚呼、英雄様は弱者を救ってもくれないのですか!!」
自分でも、言っていることが無茶なことだということは理解している。
だがこれぐらいしか簡単に説明できる理由がないし、複雑怪奇な説明で英雄が納得してくれるとも限らない。
「~~! わ、分かった! 分かったから静かにしてくれ! 案内する、案内します!」
後ろでアチャーといったポーズを取っている部下の皆様。
なんだかダメ押しだったけど、どうにか説得することができた。
周りに人がいないことは、自分たちで確認していたはずなんだけどな……防音結界は優秀な部下の方々が整えてあるし、バレる理由なんて一つとして無かったんだが。
「おお、そういってもらえて何よりです! さすがは英雄様! 本当に感謝します!」
「っ……!?」
「っと、すみません。つい嬉しくて手を握ってしまいました」
もちろんアレを装備した状態で、握手をしてみた。
英雄は身を偽っているのですぐにその手を払ったのだが、目的は果たした。
「……ま、まあいい。それよりも、君は本当に何もしないのか? 私たちの活動は……その、一部の権力者の反感を買っているぞ」
「ええ、純粋な興味ですよ。この街で、貴方がたが何をしようとしているのか。そして、それを人々がどう感じているのか……」
神代魔道具の捜索もあるのだが、少年から話を聞いて本当に気になっていた。
いなくなった人は、実際にどうしているのか……それを確かめたかったんだ。
「私たちは、革命を起こす」
「革命……ですか?」
「知りたいのだろう? なら、ついてくるがいい。私たちの目的……そのすべてを」
「お金に困っているとは思えな言葉ですね」
コケる英雄を部下が支える。
うん、真剣ムードよりはお気楽な感じな方がいいよな。
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