虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
情報ギルド その14
「ここの神代魔道具は、コンピュータみたいだな。なるほど、監視装置もそのためか」
置かれていたのはメインサーバー。
管制室のような場所、封印された部屋はそう称することができた。
「しかし、これは純粋な機械ってわけでもなさそうだな……『SEBAS』、解析を頼めるか?」
《遠隔でのアクセスは不可能なようです。旦那様、アレを接続してもらえますか?》
「ああ、分かった」
取りだしたのは、USBメモリーのような魔道具。
それをPCに当然のように付いていたハブに挿して、『SEBAS』の本体がそれを中継してアクセスを行う。
「他に何かあるかな……おっ、これが受信用のタブレットか。【情報王】も、ちゃんと管理しとかなきゃダメだろうに」
操作方法は触れたらなんとなく分かったので、そのまま何度か弄ってみる。
パスワードの設定は……って、そういえばあの機能を無自覚で突破してたか。
「魔力波動のチェック装置はあったか?」
《かなり高精度のものがあったようです。しかし、偽装用に使っていた波動偽装用の魔道具がそれを妨害していました》
「便利な魔道具さまさまだな」
ここのギルドカードは、持ち主識別用に魔力波動を測定する術式を用いていた。
しかしそれは単純なものではなく、書き換えるためには一度死ぬ必要があるくらいだ。
その点、俺はこの世界で何度も何度も死んでいたからな。
調べる機会は膨大な数、波長の変化を調べ尽くすことでそれは成された。
……まあ、一部の職業や加護を持っている者はそうした偽装もできるらしいが、魔道具としてそれを可能にしたのは俺が初らしい。
「ふむふむ、操作権限があるのか。ハッキングは可能なのか?」
《しばしお待ちを……完了しました》
「仕事が早いな」
タップしても反応しなかった部分が、頼んだだけですぐに反応した。
表示されたのは、【情報王】の陣営が集めた暗躍街の情報の数々。
──そしてついに、この街の名を知る。
「『儚想迷路』……それがここの名前か。要するに、ノアの箱舟の街版だな」
資料によると、昔の人が逃げるためのシェルターとしてここは作られたらしい。
上層で生きる者たちが避難できるよう、緊急時には条件を満たした町々に非常口としてゲートが生成される。
「それが経年劣化で一部が壊れて、今もこの街に繋がる道を作っている。あと、転移のトラップは侵入者のヤツが動いているのか」
資料の中でも必要そうなものを纏めると、こんな感じだ。
まあ、資料に纏めたものの中では、というわけなので……続きは『SEBAS』の走査が終わった後だな。
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