虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
情報ギルド その08
「うわっ、忙しそうだな」
お仕事の見学をしているわけだが、なんだかゲームの中なのに現代……それも出勤した自分を思い返してしまう光景が、目の前には広がっていた。
「いくつか魔道具化されてるけど、やっぱり地球風というかなんというか……」
情報ギルドで集められた情報を、六階では纏めているようだ。
監視の魔道具が売りのカウンターで聴いた情報を、社員の手で分かりやすく紙に筆記している。
「顔は……やつれてはいないか。この時点で死んでたら、上の奴らはどうなってるか心配になってたぞ」
社畜はあまり高い場所にいないので、本来ならこの階層がもっとも危険なのだが……魔道具の問題で、本当に忙しいのはその上の階に居る者たちだ。
ここでは行うのはあくまで情報処理だけ。
必要な情報とそうでないものを選別し、書き写す技術さえあればどうにかなるからな。
「『SEBAS』、通れたな」
《お褒めいただき、大変光栄でございます》
「あんまり俺が言う言葉でもないが……いろいろと、気をつけてくれよ」
もし『SEBAS』を悪用する者が現れれば、割と世界は危険な状態になるだろう。
今は地球に大きな干渉をしていないが、すでにネットワークにアクセスする術を持っているので抵抗できていない。
いずれ『SEBAS』から、俺の会社用のパソコンにメールが来るかもしれないな。
《送信しましょうか?》
「いや、止めておいてくれ」
──本当にできるみたいだ。
◆ □ ◆ □ ◆
「七階は修羅場、資料作成の場となります」
六階で集められた情報を、受付嬢たちが共有できる形に纏める場所だった。
スキャナーのような魔道具に紙を入れ、情報を送ることで読み込めるようにしている。
「最新の情報が入れば、それを手書きで書き直す必要があります。もっとも情報が集まるこの場所で……お忙しい部署ですね」
おっと、同情のせいかつい敬語になっていたな。
どこの会社にもあるものだ、そうした割に合わない仕事をしている部署や社員が。
「さらに言えば、間違った情報を下が送って来たときの判断もしなきゃいけないからな。機械的な作業じゃ駄目なんだよ」
ちなみにここが、平社員が働く場所の中では最上階となっている。
以降の階はまた説明をするが、平社員の持つカードではこれ以上の階は許可が無い限りもう一つ上の階までしかいけない。
「──と、いうわけでそこに行ってみよう」
八階といえば、最上階と社員が働く階との間に位置する場所だ。
そんな所に置かれるものといえば──
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