虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
情報ギルド その06
科学の力を用いた潜入作戦。
それは意外と上手くいっていた……最初の内はな。
「会員のランクが上がれば、内装まで変化するのか……まあ、当然だな」
とある企業は、株主や高ランクの会員にのみ入れる部屋などを用意していた。
多くの人々がそのスポットを使う中、自分のようにある特別な階級の者だけが入ることのできる場所……それは、人間の欲望を掻き立て多くの資産を注ぎ込ませる坩堝となる。
「だがまあ、カジノの装飾とは違うな」
あれは一般人でも分かる、派手な装飾で欲望をくすぐっている。
裏VIPエリアのように、分かる人にしか価値が分からない……そんな家具だな。
「『SEBAS』、情報は?」
《確認作業が足りませんが、時間や料金は増えておりますね》
「ゆっくりのんびりとご歓談ですか。そりゃあ椅子が用意されているわけだ」
立ち聞きならぬ立ち訊きを行っている一階と違い、二階以降は親切なサービスがいくつか用意されている。
二階には椅子が設置され、三階からは周りから情報をシャットアウトする衝立の魔道具版が置かれているのだ(それまではただの衝立である)。
「全十階の内、五階までが情報を売る場所となっているわけだが……」
《六階以降では、社員が働いています。しかし十階にはごく少数の者しか確認できておりません》
「SPみたいな奴と【情報王】か。そこまで行くのに、どれくらい時間がかかる?」
上に行けば行くほど、死亡レーダーに強い反応が感じられる。
つまりは強者が上を守護し、何かを守ろうとしているのだ。
「──そして、俺のカードは本来聞くことができる五階よりも上、九階までは上れるようになっている」
《旦那様のカードでも、十階には向かえないわけですね。認証式の扉もありますし、三階に向かう際はお気をつけて》
一階と二階は吹き抜けで繋がり、認証作業などは必要なかった。
だが『SEBAS』から聞く限り、それ以降は承認が無ければ入れないような場所にされているようだな。
「カード情報の偽装はどうだ?」
《三階、四階、五階は達成しております。それ以降は旦那様のカードでも別の手続きが必要らしく、現在社員の持つカードを解析しております》
「……あっ、それでできちゃうのね」
《執事ですので》
その一言で解決できてしまう。
本当に、『SEBAS』は頼もしいな。
「じゃあ、先に五階までの偽装を早急に行ってから、そっちを始めてくれ」
《畏まりました》
次は三階だ。
準備が出来次第、向かうとしようか。
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