虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
命乞い
「君が……新たな『超越者』かい?」
「……フラグ様め」
明らかに強そうな礼装の女性が、これまた強そうな男たちを引き連れて俺の元を訪れたこう告げた。
経緯は──ログイン→【情報王】の元へ訪れようとする→ここだ。
うん、全然意味が分からない。
目の前の女性は、背中に布に包んだ槍のような物を背負っている。
顔は……どうやら認識阻害が施されているようで、はっきりと確認できない。
あくまで女性だと分かったのは、『SEBAS』による報告があったからだ。
「人違いではないでしょうか? 私には、貴方が何を言っているのかさっぱりです」
「……そうなのか?」
「はい」
すると、後ろの男たちの方を向き「は、話が違うではないか……」などと揉め始める。
確証がないなら、接近しないでほしい。
いやまあ、当たってるのだから口に出して言うことではないけど。
「だ、騙したね……」
「なんのことでしょうか?」
首を傾げ、いかにも分かりませんよアピールをしておく。
少しだけ顔を赤くし(たように思えた)、女は声を荒げる。
「と、とぼけないでほしい、君が『超越者』であることは裏が取れているんだ。もう一度聞くよ──『超越者』だね?」
「えっと……『超越者』ってなんですか?」
「ふっ、まだ誤魔化すかい? 人の理から外れた、人智を超越せし者……それが君の正体なのだろう!」
ビシッと指を差してくる。
後ろで見ている男たちは、なぜだか拍手をしている……なんか、仲良さそうだな。
「本当に……そう思われますか? 私が、そのように」
「…………と、当然さ」
物凄く目を逸らしながら答える。
彼女からすれば、証拠も無いのに誘導して真実を求めているだけだからな。
いかにも、と言えるような力強さを感じられない俺を『超越者』だとは思えないのも仕方がない。
「そうですか……ならば、私も分相応の対応で貴方がたに帰ってもらいましょう」
「! そ、そうかい……なら、やってもらおう──はっ?」
「私のような弱者、どうかお見逃しくださいませんか? たしかにカジノでいくらか儲けましたが、そのすべてを支払います……なので、どうかお許しを!」
ジャパニーズドゲザ!
日本の文化が生みだした、最上級の謝罪を行ってこの場を逃れようとする。
……お前が面倒事を起こそうとするのは、その存在感とこれまでの感が教えてくれる。
「どうか、どうか御慈悲w──」
「……充分だ。もう、分かった」
頭を下げたままなので、彼女がどういった表情を浮かべているかは分からない……どうせ認識偽装で見えないけど。
だが間違いなく、軽蔑や侮蔑の顔をしているんだろうな。
「みんな、戻るぞ……彼は、私たちの目的には関われない」
クルッと後ろを向き、どこかへ去っていく彼女たち一向。
やれやれ、いったい何者なんだか。
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