虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

スリルな情報 前篇



 ログアウトして、会社へ出勤。
 いつも通りの仕事を終えて、すでに帰宅の途についていた。

 そして今、共に帰る拓真と話す話題は暗躍街でのイベントの数々である。

「──来ないと思ったら、そんな事情があったのかよ……」

「お前は知ってたのか? あんなに強そうで怖そうで面倒臭そうな奴が、自分の住処の周りに居ることをさ」

「知ってたけどよ、俺の所は中立地帯なんだろう? なら、問題ないと踏んであの辺りに住んでいるんだよ」

 ──情報屋なのに、【情報王】にいっさい目を付けられていないというわけがない。

 何かしらの監視システムが取り付けられているのだろう。
 そしてその存在を、まだ知らされていないと……まあ、言っておくか。

「分かってるんだろ? 中立だから、何もしてこないはずがない……なんて、ただの幻想に過ぎないって。リアルでもゲームでも、そういった例はいくつでもあっただろ」

「まあ、そうだけどな。それも込みで楽しむのがゲームってもんだろ? 奴隷や裏取引みたいなものも、あの街にはある……だが、それでもスリルがある」

「……いつもいつも、呆れた奴だな。そこまでして、スリルを求めるのかよ」

 情報屋をやっているのも、そうしてスリルな情報を集めるため。
 どこまでも危険な状況に身を置くことで、自身の欲を満たそうとしている。

「──で、トップにもう会ったと。どれだけ運がいいんだよ、お前は」

「だから、運は悪いんだって。本当ならそのままお前の店に行けたのに、そこで邪魔するように割り込んできたんだぞ? せっかくの再会を邪魔する……ああ、友情を邪魔されるとは実に腹が立つ」

「気持ち悪い台詞セリフを言うなよ。お前、そんなこと一ミリたりとも思ってねぇくせに」

 うん、まったく思ってません。
 邪魔が入ったことにはそれなりに腹が立ったが、神代魔道具を巡る闘争へ参加できたことに満足した方が良いだろう。

「あっ、そうだ──もしあっちで会えたら渡したい物ができたぞ」

「ん? この情報屋が驚くような品を用意できるのか?」

「あの街の移動経路を網羅した、地図の完全版だg──」

「早いわっ!!」

 周りの者たちがビクッとしてしまうほどの大声で、拓真はツッコミを入れる。
 ヘコヘコと頭を下げて詫びを入れて、拓真は周りに謝っていく。

「やれやれ、公共の場で騒がしくしてはいけないと習わなかったのかよ」

「お、お前のせいだ……あっ」

 二度目の過ちは犯さないようで、しっかりと口を閉じる拓真。

「ど、どういうことだ……説明しろ」

「調べ尽くして、情報を纏めた。簡単に言えばそんな感じだよ」

「……理不尽だな、お前も。あそこの情報はまだわかってないし、高値で売れるようなものなんだぞ」

 ……へー、そうだったのか。
 外部からの情報も、もう少し尋ねておくべきかな?


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