虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
カジノ その17
「うはははっ! 大量大量!」
キマイラを気絶させ、見事ゲームに勝利した俺……当然チップもガッポリ手に入り、億万長者の気分になっている。
「景品交換は最高級! 神代魔道具はどうせくれないだろうけど、貰うなら一番イイ物にしておくよな……まあ、こういうときに嵌められることがあるんだけど」
AとBの袋があったとして、その中身が秘密な状態で別の額を提示したとする。
もちろん詐欺として訴えられるが、中身を同じにしてもバレはしないだろう。
《魔力反応で違いは確認できますが……》
「こっちだと、そういう誤魔化しも難しいわけか。というよりも『賭博』はこの場所の元締めだし、信用的にそれも不可能だよな」
世の中は金と信用で回っている。
そのどちらかを失えば、間違いなく社会的にその者は死ぬ。
幾人もの権力の持ち主が、この地下世界を支配しようと動いている。
その一つ一つの挙動が全体に影響し、周りとのパワーバランスが崩れてしまう。
「──さて、交換するかな。よろしくお願いしますね……『賭博』さん」
「やられたわ……勝つことは分かっていた。けど、まだカードが切れていない。『生者』は秘密が多いのね」
「女性がいくつもの秘密を隠すように、男も秘密で着飾る生き物なのですよ。私も人間ですし、失敗はします……」
企業において、連帯責任で全体責任の問題などいくつも存在する。
何度も何度も失敗を重ね、経験を積むことで反省を生かして成長する……そんな段取りすら、今の社会において不必要と定義されてしまった。
俺もまた、そうして不必要とされた失敗を何度も起こして学習を重ねた。
幾枚もの秘密を服のように覆い、笑顔を張り付けて戦いに向かう……それが現状であり生き抜くためにやらねばならないことだ。
「『生者』など、誰もがなれます。生きるために足掻き続けた者であれば、私が資格を失えば次の候補者です」
「……本当にそうかしらね?」
「当然です。私が愚者であり続ける限り……死者である限り『生者』であり続けます。ならば『賭博』さん、真実を知った今なら把握しているはずですよ? 『騎士王』さんもこれを知っているでしょうし、口止めだけは要求したいですが……」
知っているはずだ、『騎士王』は本当の意味で万能に近しい能力を持っている。
賢者も円卓の騎士もいるのだから、内輪で状況は共有されているはず。
一方、ポーカーフェイスに特化したような目の前の女性……『賭博』。
アッチは強請るネタがあるから置いておくとしても、こっちはどうにかしないと情報が洩れる。
「……なら、ゲームをしない?」
ニヤリと笑みを浮かべる『賭博』。
さぁ、最後のゲームを始めよう。
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