虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
カジノ その15
「ふふふっ、『生者』はこうするしかなかった……我ながら陳腐なアイデアよね」
キマイラと闘う『生者』の姿を、『賭博』はある場所から確認していた。
一方的に嬲られ、弄ばれる姿はとても強者とは思えない姿で……だからこそ、観客たちに歓声を与えている。
「少しずつ勝利数を絞って、目標額に届かないように調整。あとは一発逆転を狙ってここで闘う……なんだか拍子抜けよね。もう少し足掻いてくれると思ったけど、休人は変なところで賢いしね。まあ、悪知恵の一つや二つぐらい持っているのでしょう」
本来であれば、もう少しカジノにチップを落としてからこの状況になるはずだった。
だが『生者』は、まるですべてを知っているかのように、最適なタイミングでコロシアムに参加することを選んだ。
「……『生者』には、生き残るために特別な力がある? たとえば、魔物が野生の勘で動くように危険を告げる能力。いくらなんでもそれは、一人の『超越者』に与えられる能力として異常……」
思案に思案を重ねる『賭博』。
そこには予測に過ぎない考えも入り交ざっていた。
……しかしそこへ踏み切ってでも真実を知ろうとできるからこそ、彼女は『賭博』の称号を与えられた。
「『騎士王』の権能である全能とは違う、あくまで生に特化している……そうしたスキルの統合型? というより、生の定義を塗り替えている? 休人はあの石の前で何度でも蘇ることができる。そうでなくても、しばらくすればまた現れる。……石が無い場所でも、『生者』は復活している? 常に死んでいるからこそ、ずっと生きているように見えているのね」
そして、真実へ到達する。
ここまでツクルが隠してきた『生者』の正体へ、『賭博』は初めて届いた。
「なら、敵対した時にはアレが必要になるのね。まだ泳がせているとはいえ、今さら新参者にこの街の支配権を取られるわけにはいかないのよね」
一人呟き、別の場所へ移動する。
必要な情報は纏まった……あとはカードを一枚一枚切っていくだけだ。
「あとはオープンするだけね」
場を去った『賭博』……その姿を捉えるように、機械に取り付けられたカメラのレンズが光っていた。
◆ □ ◆ □ ◆
《旦那様。やはり気づいたようです》
「うわっ、マジかよ……さすがこんな場所でずっとギャンブルの頂点に立っていた奴だ」
いつかはバレると思っていた。
だがそれは、冷静状態の『騎士王』によってだと考えていたんだが……こっちに来てしまってバレる速度が急激に加速してしまったようだ。
「直接見ていないなら……誤魔化しようがある。さて、そろそろ逆転しようか」
未だにキマイラの足に潰されているわけだが……早く、退いてくれませんかね?
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