虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
カジノ その04
「……ワオッ!」
そんな簡単な感嘆しかできないほど、目の前の光景は豪華絢爛だった。
先ほどのネオンも、これまでこの場所に辿り着くまでに見た明かりもここには叶わないだろう。
そう、かつて冥界の宮殿で見たような宝石が散りばめられた眩い光。
ここら一帯を照らし、誘蛾灯のように客をふらふらと招いている。
「場違いって言うか、異常と言うか……ラスベガスなんて目じゃないな」
まあ、直接見たことはないんだけど。
ギラギラ光る欲望の輝きに、そう感じた。
《旦那様、強者の魔力反応があります》
「……コロシアムもあるみたいだし、そこにいくつかあったのか。特殊な波長は?」
この場合の特殊な波長とは、呪いのアイテムやある系譜に属するアイテムが自ら発する固有の魔力波動のことである。
《ありますね》
「と、なるとカジノでの目的も決まったか」
そうしたアイテムを見つけだせば、集めておきたくなる理由がある。
カジノで溜まりに溜まったチップの使い道が、ついに見つかったな。
入場に関して、トラブルは無かった。
カードは正式に条件を満たした物で、引っかかる理由も無いからな。
「中も中で凄いな……空間属性の拡張か?」
「そのようでございます。小型ドローンを派遣しましたので、情報を送信します」
「──って、本当に街じゃねぇか……」
輝く家々が入り口に居る俺を迎えた。
カジノで行うゲームのタイトルがその屋根に記され、中に転位術式が刻まれている。
その所からゲームの特設会場に向かい、各自チップを求めて賭けを行う。
「食事処の方が、正直行ってみたいな。なあ『SEBAS』、とりあえず簡単なゲームからやりたいんだが……あの転位陣、物凄く嫌な予感がするんだよな」
なぜだろうか、なんて一々予想を立てる必要もない。
ここは『賭博』が経営する、もっともレートが高いカジノ。
住処にできるホテルのような場所もあるので、間違いなく住み着いているだろう。
となれば、この場所を完全に支配しているだろうし、巻き上げた真道具の中に存在するだろう監視系アイテムで俺の様子もその気になれば気づくこともできる。
今は光を屈折させて顔を細工しているので問題ないが、魔力の波長を読む転位陣の上に乗るとさすがにバレるだろう。
「術式をこっちで弄るか、転位先を見つけるかだな……。まあ、そっちの方が良いか」
魔力を隠すか使わないか、そのどちらかを選べばいい。
「目立ちすぎたら駄目だし、そうでなくとも気づかれたら厄介事に……面倒だな」
重ねに重ねなければ、この場所すべてを支配する管理者から逃れることはできない。
普通にカジノができない、というのもなんだか面倒だな。
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