虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
カジノ その03
「お、おめでとう……ございます」
「あ、ありがとう……ございます」
引き攣った笑みを浮かべる受付嬢。
俺もまた、同様の歪んだ笑みを浮かべて返事をする。
「さすが……『SEBAS』だな」
《お褒め頂き、光栄です》
「……というかだな、てっきり何か細工をすると思ってたよ。純粋に当てるって……いったいどうやってやったんだよ」
こう、ドーピング用のポーションを渡したりお手製をアイテムを装備させたりとかさ。
そんな予想は一蹴され、『SEBAS』が指定したプレイヤーを選択すると必ずソイツが勝つのだ。
──さすがに疑問がいっぱいだよ。
《簡単です──執事ですから》
「執事……だからか?」
《執事、ですから》
……なぜだろう、その言葉で思いっ切り納得している自分がいる。
これまでもそうした現象はいくつもあったし、否定する理由が見つからないからか?
まっ、信頼している『SEBAS』の言葉だからだな。
さて、そんなわけで無事目標額を突破することに成功した。
このカジノで貰ったカードに特殊な術式が刻まれ、上位のカジノへ入場可能となる。
「しかしまあ、いろいろな品と交換できるみたいだな……」
《こちらでは、回収した品を有用に活用しているのでしょう。旦那様も、一つ交換なさりますか?》
「うーん……どうしようかな?」
ラインナップはかなり良い。
高価な消費アイテムや武器、日用の家具などが主に存在する。
……だが一番目を引くのは、スキルを習得できるアイテムや職業や種族を変更する際にその種類を増やす物だろうか。
「あれ、俺でも使えるのかな?」
《旦那様は、:DIY:に魂の器すべてが使われていますので……その、難しいかと》
「難しい? ゼロじゃないのか」
そこは俺も理解している。
それに、そこで器が満たされていても、後天的に強化する方法はいくらでもある。
《はい。旦那様のご想像通り、上位存在からの干渉であればどうとでも。リソースを向こう側が消費してくれますので、旦那様に負担はかかりません》
そうでなければ、『生者』なんて規格外の能力を手に入れることはできない。
「ただ、ありふれたスキルとかが多いな。剣術とか盾術、職業も村人とか……奴隷って、売れちゃっていいのか?」
《暗躍街ならではの、奴隷が自らその身分から逃れる手段です。奴隷の職業を賭けの対象として使い、勝つことでカジノ側にそれを奪わせる。【奴隷】は【奴隷】で用途がありますので、カジノ側にも損はございません》
「……奥が深いんだな、カジノって」
そう思いながら、俺はカジノを後にする。
──次は、もっとランクの上な場所へ!
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