虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

アジト その06



 並び立つアイテムに統一性が見える。
 先ほどの乱雑とした配置とは異なり、明確な意思によって整理整頓されていることがよく分かった。

「武器が少ないですね」

「俺たちは武闘派だからな」

 リーダーが近接戦闘に特化しているのだから、それもそうだろう。
 本当に価値のありそうな芸術品や魔道具、それにアクセサリーなどが置かれたこの部屋こそ──『拳王』の派閥の者たちが集めた、貴重品の収納庫であった。

「アイツの願いを叶えてくれた、か……つまり対等に闘える相手として、アイツを満足させてくれたということで合ってるな?」

「申し訳ございませんが、まったく真相は異なります。私はサンドバック──殴られ役を務めただけです」

「……アイツの全力を受けられる時点で、それはそれで立派に責務を果たしているな。アイテム3つってところか?」

 ここにあるアイテムの価値を考えれば、それでも満足はできる。
 だが、ここは粘り強く交渉するべきだ。

「6つ、ですね。こちらは『権能』を全力で使ってこの場まで来たのですよ? 『拳王』さんの力は一方的に振るわれ、私は何もすることもなく……一方的なイジメですよね? その場所が力こそがすべてと謳うこの辺りならともかく、そこは中立地……慰謝料は取れるはずです」

「4つだな。使う使わない、受ける受けないの選択の余地はあったはず「最初の一撃、完全に不意打ちでくらいましたよ」……5つで勘弁してくれないか?」

「ええ、平和的に解決できて助かりました」

 完全に被害者だし、その気になれば録画した映像を投影して訴えることもできた。
 そこまでしないのは、その映像から何かしらの情報が得られてしまうことを防ぐためでもある。

 ──最初より二つ多く貰えるのだし、それで今回は妥協しておこう。



 宝探しはすぐに始めた。
 頼れる『SEBAS』による物品鑑定が行われる中、ただアイテムを持ち上げるだけの仕事に就いた俺は暇となる。

 なので、ヴィキンと話をして暇を潰している所存だ。

「なるほど、同じ場所で」

「そうだ。ガキの頃からここで育ち、アイツはそのリーダー格だった。大人が相手だろうと拳を振るって、俺たちみたいな馬鹿野郎に自分の奪った飯を与える……礼なんて求めてこなかった。ただ、ぶっきらぼうに小さく笑うだけでな」

「昔から、良い人だったんですね」

「本人は否定するがな。そしていつしか、アイツは『超越者』になって自分だけの領地を設定した。昔の俺たちみたいな奴が生まれないよう、最初から無法を法として定めた歪んだ場所として。だが俺たちみたいな奴には、そんな場所が落ち着くんだ。綺麗な場所でしか生えない薬草があるように、俺たちみたいな汚い奴らはここで生きるしかないのさ」

「そう、ですか……」

 宝探しの間に訊くことじゃなかったかな?
 そんなことを思いながらも、俺は宝を捜索し続けるのだった。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品