虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
招待状
少なくとも今日は、『騎士王』が街を徘徊することは防げた。
だが、相手は全能というチートな権能を有する最強の騎士……うん、先延ばしにしかならないや。
「かと言って、また外に行けばトラブルが起きそうだし……大人しくしてよ」
子供たちで癒されたり、ギルドへ納品をしにも行った。
焼き串屋の店主と情報交換を行ったり、道行く情報通なオバちゃんの会話に耳を傾けたりもした。
「イベントでもあれば、また気兼ねなく遊べるんだが……『天』関連も進まないし、まだ先のことかな?」
運営も次のイベントを盛り上げるために、きっと頑張ってアイデアを練ってくれていることだろう。
これまで参加したイベントはすべて楽しめているので、次にやるイベントもおそらく楽しめるはずだ。
そう考えると、ワクワクが止まらないよ。
「あ、ちなみにだが、すでに『天』の情報収集は済んだ。そうだな、『SEBAS』?」
《……本当に、場所は言わずともよろしいのですか?》
「それはまあ、やり方があれだしな。どうせなら、『天』の集まりで会いたいだろ」
派遣したドローンたちが、とっくにすべての『◯天』所持者を捕捉している。
完全に能力を解析し尽くしたわけではないが、ある程度の予測は付けられた。
……そして、家族の所在も。
だが俺は、『SEBAS』にその情報を伝えてもらわずに隠蔽してもらった。
なんだか気が咎めるというのもあるし、今知っては面白くないだろう。
それに、調べる気になれば転送システムの履歴から場所を特定することもできた。
やはりやらなかったのは、俺のちっぽけなプライドが邪魔をしたからだろう。
「運営側の情報は?」
《公式サイトでの情報公開はございません。また、プレイヤーの質問に対する答えにもそのようなものはございません》
「……まだか。こういうのは、やっぱりタクマに接した方がいいかもしれないな」
《座標は──》
「そっちは把握してある。強引に押しつけられたからな」
何度も話す機会があれば、拒否していても情報は行き渡るものだ。
まったく、良いと言っているのに少しずつ何度も言いやがって……お蔭様で覚えたわ。
「待てないからな、そろそろ強硬手段に入った方が良いか。タクマに一度接触する前に、全員に招待状を送ろうか。『SEBAS』、これから言った文章をそのままテキストにして、メールとして送ってもらえるか?」
《畏まりました》
その後、俺は親愛を籠めた文章を誰も居ない場所でペラペラと並べ続けた。
そしてそれは、誰かの元へ──
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