虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第一権限 その04
「──と、いうわけでゴールに着いたな」
歩くことに苦を感じる前に、どうにか目的地に辿り着くことに成功した。
音楽や動画、仕事の相談などをしていれば意外とすぐに時間は過ぎた。
……それほどまでに、悩むことが多かったのかとショックも受けたが。
「目の前には怪しすぎるほど濃い霧、辺りはそれが散布された影響で入口よりも濃密な黒霧……そう、吸収力がアップなのだ」
変わっちゃったね、吸引力。
冗談半分で流しているが、これならレイドボスも瞬殺だろ……と言えるぐらいには霧の吸収力が高まっているのだ。
《生命力・魔力・精神力のどれを使った対応策でも無効化されます。そういったこの世界特有の法則を使わない手段を選ばなければ、ここへ辿り着くことは不可能でしょう》
「資格が無い奴は、だけどな」
やはりゲームらしく、吸収耐性というスキルぐらいあるだろう。
それをカンストまで上げればあるいは……資格が無くてもイケるか。
「問題は資格が有る奴だよな。『冥王』はたぶんあるんだろうけど、あの娘に関しては今はいいや。それより、厄介なのは……」
《守護者でしょうか?》
「そうそう。某ゲームの考え方からか、囚われたキャラには必ず見張りがいるからな。しかも、強制イベントだし」
ほうら来たよ、と呟くと同時に──奥からナニカが蠢く音がする。
ブブブブブッと耳に入れると悪い意味で忘れられない、そんな不快な音が。
「質じゃなくて量で勝負か? いや、こんな場所に居る時点でその両方か」
《ドローンによる迎撃を》
「いや、それには及ばんよ。……今の俺はトライ&エラーでも気にしない。それなら策も無限にあるさ」
称号『貧弱な武力』があるので、相手がメタル系の奴でも必ずダメージは与えられる。
要は根気が続くかが問題だ。
アイツらは、それを削ぐことに特化したともいえる存在だし。
「さぁ、かかって来いよ──害虫ども!」
闇同様に真っ黒に染まった羽を広げ、奴らは一気に俺の元へ飛んでくる。
侵入者を食らいつくす、その強い意気込みがヒシヒシと伝わってきた。
だが俺も、負けるわけにはいかない。
どれだけ身を抉られようと、骨を削られようと戦う理由がある。
「汚物は消毒だー!」
えっ、目的が変わっている?
家庭のためにアレと戦い続けたんだ。
反射的に戦うことが義務付けられていると言っても、過言じゃないんだよ。
俺が地球でコイツらと戦っていれば、間違いなく敗北していただろう。
数にして数千……いや、数万。
夥しい数のアレが原始的な恐怖を湧きあがらせ、世界をどん底に落としてると見える。
だが俺にはこれがあった。
非力な人類が生みだした、そのシステムに抗うための兵器。
「GJP、疾くと逝ね」
スプレー缶のような物から、膨大な量の煙が噴きだすのだった。
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