虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第一権限 その01
「久しいわね、『生者』君。貴男がここに来るなんて……何かあったの?」
「いや、少し観光をさせてもらおうと思ってな。駄目か──『冥王』様?」
そう、俺がやってきたのは冥界。
居るのはすぐにバレるので、宮殿に向かって通行許可でも貰おうという算段だ。
「構わないわ。ただ、具体的にどこへ行きたいのか、それを教えてもらいたいわね」
「宮殿の奥深く、何者かが眠る場所……とかだな」
いやー、殺気に呑まれるー。
ほんの一瞬ではあったが、『冥王』から猛烈で濃密な殺気が送られてきた。
その拍子に死んでしまったわけだが、気にせずコホンと咳払いをして話を戻す。
「俺に第一権限が与えられたのにも、それなりの意味があるかもしれない。だからこそ、それで行ける限界を見たくなったんだ。王族にしか与えられないという事情はちゃんと覚えている。それでも行ってみたいんだ……頼む、独りで行かせてくれ!」
「さらっと単独で向かうことまで要求しているじゃない。生きている人間は、本当にどこまでも欲に忠実ね」
「まあ、生への執着もある意味じゃ欲なんだから仕方ないだろ。生まれながらの罪人、それが人間ってもんさ」
はるか昔にアダムとイヴが果実で禁断の追放だかを受けたらしいが、それが嘘でも本当でも今の人間は業を背負っている。
身の丈にあまる地球の支配、悪の組織はそれを自分たちだけでやろうとして失敗を重ねているが……ある意味で、人類は力を合わせて地球を征服したとも言えるじゃないか。
空を飛び、海を渡り、地を統べた人々。
挙句の果てに、星々が輝く新たな世界にまで人は手を伸ばそうとしている。
ここまでやっておいて、欲がいっさいないとは言えないだろう。
閑話休題
「それで、行くことについては……どうなんだ? やっぱり駄目か?」
「それなら駄目元でも聞かないでほしかったわね。答えはYES、別にいいわよ」
「……ハ? いいのか?」
「ええ、好きにしてくれて構わないわ。……ただ、ある条件を呑んだらね」
あっさりと答える『冥王』。
行かせてくれるなら特に問題はないが、その条件とやらが厄介だな。
「いっしょに行く、とかだったらお断りなんだが……」
「あら、王家の秘密を暴こうとしているわ。なんて恐ろしいのかしら」
「心にもないことを。いいから条件を早く説明してくれ」
まあそのあと、『冥王』は簡単に条件の内容を説明してくれた。
俺は少しだけ悩んでから、それを受け入れることにする。
……そして、宮殿の地下に案内された。
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