虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

疲労理由 前篇



 応援しただけでは駄目だったようで。

 後日、再び呼びだされてしまった。
 毎度のようにギルドの受付嬢に依頼があるかどうかを尋ね、それからギルド長の元へ向かう。

「──は、入っていいよ」

「どうされたので、ギルド長? なんだかお顔が赤いように……」

 許可を得て入ってみれば、体調を取り戻したギルド長が仕事をバリバリしていた。
 ただ、少し働きすぎたのか顔が紅潮しているのが駄目だな。

「な、なな、なんでもないさ! そ、それよりほら! 座ってくれたまえ!」

「そうですか。では、お言葉に甘えて」

「…………」

「おや、今回は対面なんですね」

「~~~~~~~!」

 ヤバッ、なんか面白いわ。
 一通りギルド長をからかってから、話を始めることにした。



「……なるほど、お疲れ様です」

「全部君のせいじゃないか。指定依頼OOチョウエツシャ関連の仕事は、流さないでくれよ」

「人類の敵候補である私の味方は、そう多くは無いんですよ。これまでの経験から、貴方が多少は利益よりも別のナニカで動いていることは分かっていますし……保険です」

「そのせいでぼくは……その、少し疲れるぐらいには仕事が増えたんだからね」

 地球では、もっと多くの企業戦士が働いていると知れば、ギルド長も大人しく諦めるかもしれない……だが、残酷な現実をこちらに持ち込むのも諸刃の剣アレなので止めておく。
 ──そもそも、ギルド長に当たってもしかたない事案だ。

「信じがたい話だよ。新星に『超越者』、おまけに【魔王】まで。君たち休人……ああ、君は星渡りの民でも通じるんだったね。彼らの冒険は、ぼくたちの想像をはるかに超えてこの星で騒動を起こしているよ」

「自分だって、望んで遭ったならば許容したでしょうが……この街に訪れるアレを防げるならば、何も言いません」

「……あんなに普通に現れた『超越者』を、ただの一般人にどう対処しろと? ぼくたちが束になって挑んでも、意にも介さず消し飛ばせるのが君たちの存在だよ」

「疲れるんですよ……本当に。何せ、相手は王様ですからね」

 スイッチ一つでどうにかできるとはいえ、対魔術の阻害装置は開発が頓挫している。
 科学と魔術が云々とかいうことではなく、あの王様の魔術のスペックを抑え込むのが難しいと言う話だ。

「まあいい、ここまではいいんだよ。ぼくもこれぐらいだったら、まだどうにかなった。貿易の件も、他の休人が密かに動いていた新しい街の建設も対処できたよ」

「……ああ、あれですか。一度たりともお世話になっていないので忘れてました」

「正直に言って、君以外の人はまだ扱うのが楽なんだよ。だって、オーバーテクノロジーみたいなアイテムを出さないんだから!」

 ……はて、何かしたかな?
 ギルド長の声の上がり具合からして、またやってしまったみたいだ。


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