虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
疲労限界
と、いうわけで一度初期地点へ戻った。
生産ギルドは相も変わらず冷たく、依頼があるかを尋ねても一蹴されてしまう。
「──なあ、本当に無いのか?」
「ありません、ございません。存在しませんので、ギルド長の元へ向かってください」
「……ハァ」
トボトボと、しょげるオーラを出しながら移動を開始する。
……だがしかし、誰も同情しない。
冷たいよ、世界が。
いつまで経っても依頼は受けられず、クエストも最近はまったく起きていない。
というよりも、『超越者』絡みのイベントが多すぎて疲れたな。
最近は新しく【魔王】と『◯天』という面倒事の種が増えたし、本当に直接会うのは久しぶりだ……仙人たちとの一悶着以降か?
結論から言おう──壊れてた。
「あ、ツクル君だー」
「お、お久しぶりです」
「うんうん、気にしなくていいよー。それよりほら、座って座って」
なんだか語尾に『♪』が付きそうなほど嬉しそうに、俺を迎え入れるギルド長。
少し訝しむが、ここまで弱らせたのも俺のせいかと項垂れて誘導に従う。
「……あの、ギルド長」
「どうかした?」
「近すぎません」
そんなことないよー、などと言うギルド長は俺の座るソファの隣に居る。
……何なんだ、本当に。
《……『状態異常:疲労』レベル四。かなり危険な状態ですね》
そこで、『SEBAS』から答えが届く。
そっか……ギルド長、もうすでに限界だったんだね。
「ギルド長」
「な──ぬぐっ!」
「申し訳ありませんが、今の貴方に正常な思考はできていないようです。しばらく休むことをお薦めします」
ポケットから『快眠の丸薬』というアイテムを取りだし、口の中に突っ込む。
しばらく抵抗していたが、最後にはそれを飲み下し──ポテッと倒れることになる。
「ほとんど俺のせいなんだろうな。普通、初期地点のギルドの長が、ここまで疲れるような事柄に巻き込まれるはずなんてないんだろうし……」
《優秀すぎるが故、なまじ耐えられていたのでしょう。それが旦那様の来訪によって、ついに限界を迎えた。……新しい仕事を与えられる、そう体が認識したのでしょう》
「まあ、ほぼ正解だしな。許可証の方は、あとで秘書さんを通じて用意してもらおうか」
できることなんて、もう何もないさ。
俺が原因でこんな状態に至ったと言うのだから、本当に俺がいても良いことはない。
それでも少しは手伝いたいので、『SEBAS』を通じてではあるが、机の上にあった書類の一部を消化しておく。
同時に、机の上にいくつかギルド長のためになるポーションを置いてこの場を去る。
──本当に、頑張ってください。
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