虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
エウスト
W8
馬刺しについては後々考えるとして、今は冒険を続けることになった。
あの後も何度か魔物は現れたが、どれも電撃に対する耐性が低かったため似たような結果しかなかったため割愛とする。
「ここは……町、なのか」
八区画にして、ようやく人の住む場所を見つけることができた。
……いやまあ、進路から少し逸れれば在ったんだけどな。
もともとの目的が西に向かうことだけだったから、あえて行かずに真っすぐ突き進んでいただけの話だ。
「『SEBAS』、あの町は?」
《名称『エウスト』、特産品は布です》
「へー、布か……」
当初はもっと詳細な情報を教えてくれたのだが、俺が不必要ということでカットした。
ちゃんと尋ねれば答えてくれるが……今は必要ないのでそれは止めておく。
「何かトラブルは?」
《表立った事柄、またプレイヤー間の掲示板内に情報はございません》
「というか、プレイヤーは」
《すでに到達しております》
「そうか……よし、向かうとしよう」
プレイヤーが何度入場しているなら、衛兵もそう怪しむこともないだろう。
プレイヤーとはどういった存在か、それをしっかりと知っているんだからな。
はい、そして見事に入れました。
危険人物と間違えられるとか、入場の際に一悶着……なんて展開はございません!
あくまで、普通に入っていったぞ。
「ほうほう、たしかに布を売っている店が多く見受けられるな。どこかが独占しているってわけでもなさそうだし、少しは行商をやっておいた方がいいかもしれないな」
《一度サンプルを得てもらえれば、品質を解析することができます》
「ああ、店ごとに違うだろうし資金を気にしないとダメそうだがな」
金自体はもう∞級に持っているが、そんなバブルみたいな使い方は後の子供たちへの教育のためにならない。
常日頃から戒めとして、使用する金額を定めておくことが大切だ。
……もちろん、使わないと経済が回らないので額は結構高めに設定しているが。
「布が売れてるって話だし、ここで自動機織りマシンなんて用意したら売れそうだな」
《そう考えるプレイヤーもいると思われますが、旦那様のアイテムに敵う者など決しておりません。望むままにご行動ください》
「……そう言われると、なんだか怖くなってくるな。うん、やっぱり止めておこう」
すでにアイプスルで技術革新はやり続けているし、この世界にそれを持ち込んでトラブルを引き起こす気もない。
「ま、まあ、とりあえず露店に並ぶぐらいの布から調べていきますか」
《畏まりました》
目的も定まったし、とりあえず移動を始めよう……ずっと門の隅っこの方でぶつぶつと会話してたんだよ。
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