虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
悪鬼 その01
『グォオオ……』
「あれ? 弱々しいな」
エリクサーを呑ませた悪鬼は、すぐに目を覚ました……のだが、なんだか周りをキョロキョロするばかりで、暴れたりはしない。
《自身の状況が、ある程度理解できているのでしょう。それにあの物ノ怪、自身が脈と接続できていないことに不安になっている模様です》
「……まあ、引っ越したしな」
ここはこれまで居た場所ではなく、別の星である。
異国の地ならともかく、まさかの別世界とは悪鬼さんもビックリだろう。
「『SEBAS』、悪鬼語は?」
《完成しております。『物ノ怪語』として登録しました》
「よし、ありがとう」
首に付けた翻訳機を作動、意味不明な声を上げる悪鬼とのコミュニケーションを取る。
「……誰だ、お前」
「会話できるようだな。……憶えていませんか? 最後に、寝る前のことを」
「──! そうだ、思いだした。俺はたしかに軛から外され……お前を見つけて!」
どうやら思いだしてくれたようだ。
だが、拳がプルプルと震えている。
まるで怒りをこらえているようにも見えるし、レーダーが警鐘を鳴らし始めた。
「永年の封印から解き放たれ、最初に見つけた雑魚。食事をしようとしたはずだ……なぜだ、なぜこうなった!」
「あのままでは、貴方は現代の『陰陽師』たちによって再封印……あるいは抹殺されるところでした。なので私が、別の場所に隔離して救うという手を取りました」
「陰陽師だと!? あんな烏合の集まり、この私自ら滅ぼしてやったわ!」
まあ、凄い経歴の持ち主だようで。
……本当に、なんて奴を俺に任せたんだ。
「私をあの地に封じ込めたのは! 忌々しい『超越者』の手によるものだ!」
「『超越者』……ですか?」
「そうだ! 私の獄炎も瘴雷も百鬼夜行も効かない、異常の権化。あの化け物が相手でなければ、私はあの地を覇していたはず!」
「『陰陽師』の名を冠する、『超越者』では無いのですか?」
式神を操る『陰陽師』であれば、そこまでの言われは無いだろう。
なので、いちおう確認しておくと──
「……そうか。陰陽師も、今の世では理から外れた者がいるのか。だが! 私に地を舐めさせたのは別の者だ!」
「なんと! まだ他の者が!」
寿命で死んでいるとは思うが……同じ権能がどこかで生きているだろうし、もしかしたら長寿の種族かもしれない。
油断はできそうにないな。
「──! 貴様、貴様からも『超越者』の嫌な臭いがするのはなぜだ? 返答次第では、貴様を殺すことになるぞ」
「なぜって……『超越者』ですか──」
「死ね」
瞬間、世界が一瞬で暗くなった。
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