虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
陰陽師 その05
行きにも使わされた転移用の札を使い、俺は央の都市に戻ってくる。
こちらの札も最低限の技術しか使われておらず、情報を晒す気はほとんどないのが目に見えて理解できた。
「ただいま戻りました」
「お疲れ様です、『生者』はん。悪鬼はどうなはりました?」
「ええ、どうにか眠ってもらいました。その間に一日一回しか使えないものを使い、そのまま終わらせましたよ」
「…………そうですか、わざわざそのようなものを使わせてしまうなんて、ほんますいまへん」
「構いませんよ。事前に交渉は済んでいますし、私は約束のものさえいただければそれで充分です」
本音でございます。
だって、式神なんて便利な存在がいればドローンと合わせて二大監視装置が用意できるからな。
……まっ、式神は装置じゃないけど。
「ああ、『生者』はんに例の物を」
『陰陽師』がそう言って手を叩くと、どこからともなく現れた子供が、一冊の本を俺に手渡してくる。
「式神に関する情報、『生者』はんが求めていた物です」
「──今、見せてもらっても?」
「……『生者』はん、楽しみにあとに取っておくものやないか?」
「ははっ、申し訳ありません。私は逆に、楽しみは初めに行うタイプでして」
そう言って、許可も取らずに本をペラペラと捲り始める。
「──おや? おかしいですね」
「…………」
「なるほど、たしかに式神に関する情報が記されているようですね。ただ、この本は謎解きの要素もあるのですか」
情報には穴があり、基礎知識以上は本から理解できないようになっていた。
というか応用の情報など極一部しか載っておらず、おそらくこの街を巡れば知れるであろう情報程度しか記されていないのだ。
また、アイテムに関しても超簡易な札が一枚挟まっているのでそれなのだろう。
一式、しか求めていなかったからな。
「……そうやって解いた方が、『生者』はんも喜んでもらえると──」
「喜ぶと言うのなら、『陰陽師』さん直接教われたら喜びますかね」
「……そうですか。なら、ウチが教えてはりましょう。やり方はウチ独自のもので構へんでしょう?」
「はい、それこそありがたいですよ。申し訳ありませんね、まさか本当に『陰陽師』さんが教えてくれるとは……」
まあ、この展開しかバレたからには選べないだろうな。
たしかに、あとから気づこうが式神に関する情報は渡したのだから契約は履行されたと言える。
「ほな、場所を変えましょか」
「ええ、どうなるか楽しみですよ」
二人でニコニコと笑いながら、俺たちは移動を始めるのだった。
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