虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
使い幼女
だがまあ、『騎士王』の情報に煽られた者たちが捜索を始めても困る。
生産ギルドへ数か月分のポーションを納品して、引き籠ろうとしていた。
「うん、未然形だったんだよ。だからって、このタイミングで来るのかよ」
「お主が『生者』じゃ……だな。すぐに来てもらうぞ……よ」
近道を通ろうと裏路地を歩いていると、止められてしまう。
見た目はただのロリ。
『超越者』でも無いようだが──単語を知っているだけでもうアウト。
膨大な戦闘力が警鐘を鳴らしているし、本当ならすぐに逃げたい。
「えっと……人違いでは?」
「わら……私の眼は誤魔化せぬ……ない」
鑑定以外の何かで、俺に気づいた?
けどまあ、ここでボロを出せばただの正直者になってしまう。
「あの……拘束を解除してくれませんか?」
「『龍王』からも逃れるその力、一度でも逃がせばもう隙は生まれぬ……ない」
あの人の結界、本当有名なんだな。
どうにも噂だけが一人歩き、というのがこのゲームだと多い気がする。
止められている、とは拘束のこと。
魔力を縄にして縛る──魔力版“雲縄”のような技で俺は捕まえられていた。
「──まあ、そろそろ時間がありませんので失礼させていただきます。ご連絡があれば、後ほどそちらの名刺にご本人がお願いしますと伝えてください」
「! ま、待て!」
無理無理、納品するだけだと思って飯前にログインしているんだ。
すぐさま自殺で拘束から逃れ、そのまま死に戻りによる転移を行う。
せめてアポを取っての接触、それを心がけてもらいたいよ。
◆ □ ◆ □ ◆
アイプスル
「あの幼女、和服だったな……」
《日本に該当する国も存在します。しかし、日本食を渡す気はほぼ無いかと》
「どこだ?」
《四十区画先でございます》
運営……そんなに嫌なのか。
どうせ区画の遠さだけでなく、面倒な地形トラップも設置されているだろう。
「とにかく、あの幼女に渡した名刺の座標から正確な場所を割り出してくれ。これであの世界の米……じゃなくてコメが食べられる」
《現在は街の中を捜索しております。隠蔽系の能力を所持しているのか、堂々と道を歩いていますが誰も気づいていません》
「看破系のスキルと隠蔽系のスキル。諜報員でも『超越者』が送ってきたか」
《それだけの人材が居ても、【魔王】の脅威に怯える必要があるのですね》
権能を奪う、権能。
抗える者はおそらく、本来選ばれし者たちとプレイヤーのみ。
それ以外の者は『騎士王』ですら、権能を奪われてしまう……やれやれ、厄介だな。
「とりあえずは連絡を待とう。何もないならそれが一番いいけど」
《では、こちらは調査を》
それからしばらく、引き籠もりライフを行うことになった。
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