虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
器用貧乏
街に行くと絡まれる、それが定番となりつつある。
「……『騎士王』か」
「久しいな、『生者』。何をしていた?」
「観光を少々な」
「『生者』に会えぬ間、ただただ逃げ惑うことしかできなかったのだぞ。どうしてくれるのだ『生者』」
知らないよ、本当に。
そっちの都合まで考えてる暇はさすがにないんだよ。
「連絡がつかないからな。俺もどうしようもないんだよ」
「ふっふっふ……そんな『生者』に朗報だ。なんと『超越者』の集会に参加すると、もれなく連絡用の魔道具が──」
「要らん。それに、必要なら造れる」
「そうか……。せっかく『機械皇』と『魔導技師』が共同で作った魔道具なんだが」
「…………要らん」
欲しいです、正直欲しいです。
その称号からして、いかにもという存在ですから。
でも残念なことにね、この二人放浪タイプの『超越者』なんだよ。
だから『錬金王』と違って探していなかったし、諦めていたんだ。
「まあ、そこまで言うなら諦めよう。だがな『生者』、お前の存在はすでに『超越者』たちに知られている……それを忘れるな」
そう言って立ち去ろうとする『騎士王』。
いや、逃がすわけないだろう。
マジックハンドを伸ばして肩を掴む。
「『騎士王』、どうやったら情報が漏れるのかなー? 直接関わった奴は、そう多くはないんだよー」
「わ、私だけではないっ!」
「……複数犯だと供述するのは別に構わないが、語るに落ちるとはこのことだな。理由を言えば、まだ許すかもしれないぞ」
とりあえずそう言っておくと、『騎士王』は説明を始める。
「【魔王】はすでに、一人の『超越者』から権能を奪っている。まあ、あくまで過去の、という修飾がされるが」
「へー、奪われた奴がいたのか」
それはそれは、【魔王】にも教わっていない話だな。
「そうした過去が『超越者』を恐怖に掻き立てる。長い間権能を使っていたからこそ、それが失われることを拒むのだ」
「……まあ、便利ですからね」
「その一言で権能を称せる者は少ない。私でも、突然『万能』が消えれば少しは驚く」
そんなチート権能を持っているのに、少ししか驚かないところに驚くべきなんだろう。
……うん、野暮だからしないけど。
「奪われた権能は?」
「【器用貧乏】、その代の魔王は何でもできるようになって苦戦したようだ。また、この権能はその代の魔王が死ぬまで宿す者が現れなかったとされる」
「死ねば返還されるんだな」
ならば、今の【魔王】はこれを所持しているのだろうか。
おそらくだが持っている……なんせ彼は、コピーができそうだからな。
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