虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

ボトムアップ


 アイプスル

「──よし、改造できたぞ!」

《おめでとうございます》

「正直:DIY:のレベルがカンストしていなかったら失敗してたかもな。こういう情報が浮かぶようになったのって、レベル10に上がってからだし」

《古代技術……そこにヒントが隠されていますね。さすがに運営も注意深く情報を隠蔽しているようで、通常の方法では集めることも難しそうです》

「ま、そこはほどほどにな」

 先日、ドゥーハストの城の地下で見つけたロボドラゴン。
 数日かかったがどうにか修理と改良、そして改造を行うことに成功した。

「無駄な機能を省き、男のロマンを組み込んだ結果──二足歩行のロボに変形できるようになったぞ」

《それが地下に置いてきた物ですか》

「あれがあれば、あとでこっちを見た時に違和感を感じづらいだろう。だって類似した形状をしているんだから」

 姫様なら理解しているだろう。
 嘘は吐いていなかったが、言っていたことのすべてが真実じゃなかったんだし。
 あまり社会人を舐めないでもらいたい。

「まあ、さすがに人間モードは用意してないけどな。『SEBAS』に頼まれたプログラムも入れておいたけど……あれはなんだ?」

《擬似人格プログラムの一種です。しかし、それと同時にボトムアップ型のAIが組み込まれています》

「はっ……?」

《教育はこちらで行いますので、旦那様のお手を煩わせることはないかと》

「…………いや、ちょっと待て。ボトムアップ型なのか? トップダウンじゃなくて」

 ここで分かりやすい豆知識。

 あらゆる情報を入れて、人間と同じ反応を求めるのがトップダウン式。
 人間そのものを再現して、知性を芽生えさせるのがボトムアップ式。

『SEBAS』はトップダウン式のAI……の、はずだ。
 ネットと接続した結果、世界中の情報すべてを識るスーパーAIになった。

 だが、会話に出てきたのはボトムアップ式のAI……人間、再現したの?

《生物の情報、それに魂の観測はある程度完成していますので》

「……手袋の影響もあるか」

《仙丹のエネルギー源、それがヒントとなりました。人間の最終到達点、その一つが人間ですので》

 俗世を捨て去った者が仙人、欲を捨て去った者が仙人などいろいろな説がある。
 だがどれも人間とは一段階超えた存在であり、そう仙人を称していた。

《観測できた魂を元に魂を完全解析。それを一から育ててみようかと》

「……まあ、なんでも一度やってみることが大切か」

 頭ごなしに否定しても仕方ない。
 とりあえず成長できるかどうかを確かめてから、結果に応じて考えてみよう。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品