虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ドゥーハスト騒動 その07
《古代技術の産物です。箱庭と同じ時代に造られたものと見て、間違いありません》
調べに調べた結果、『SEBAS』はこうロボドラゴンを纏めた。
すでに解析とスキャンを終え、あとは帰るだけという段階まで進めている。
《複製に関しては旦那様のお力があれば容易いですが、一体でも奪われれば一大事です。控えた方がよろしいかと》
「技術的に出回ったらやばいか」
《ポーションには及びませんが、セーブ石と同等の価値があるかと。破壊兵器としてもそうですが、まだブラックボックスの機能が隠れていますので》
ロボドラゴン、そういえば翼があるのに飛ばなかったよな。
まだ機能がある……男のロマンだ!
「報酬として提示しておいてよかったな」
《おめでとうございます》
誰も居ない地下の空洞で、この後俺は高笑いをしていた……特に理由は無い。
◆ □ ◆ □ ◆
「ご無事でしたか!」
「火は吹かれましたがどうにか……魔道具、見てもらえましたか?」
「……あれだけのことをするものが、まさかこの城の地下に眠っているとは。他国に知られればどう受け止められるか」
そう、俺の情報の真偽が分からない彼女たちのため、ドローンによる空撮をしていた。
なので、こうもあっさりと話を信じてもらえるというわけだ。
「姫様、本当にあげちまうんですか? 使いたくはねぇけど、抑止力として置いといた方がいいんじゃ──」
「アレを使い、その責任すべてが取れるとも思いません。この国にあの兵器に関する物を差し向けない、そういった契約を交わしてもらうだけでもお釣りが出ます」
「……それもそうだな。あれは今の騎士じゃ何人死ぬか分かんねぇよ。腹が弱点だってのは分かっても、その前に死んじまう」
ロイスもまたこんな風に諦めた。
持て余す力は自身すら滅ぼすものとなる。
──『騎士王』が万能の力を狙われるように、【魔王】が簒奪される恐怖から命を狙われるように。
「『生者』の名に懸けて誓いましょう。地下にあった兵器が私の指示によってこの国を襲うことはありません。もしそうなったならばこちらへ出向き、起動を食い止めましょう」
「セーリア・シャス・ドゥーハストの名において契約を受け入れます」
まっ、あくまで口約束なんだけどな。
ポーションの代金を必要としない代わりとして、この口約束をすることにした。
契約の魔法か魔道具を使えば絶対遵守の誓いにすることもできたが、互いにそれを行うことはない。
「──では、代わりの物は置いておきましたので。これにて失礼を」
「えっ……? あっ、はい。ありがとうございました」
こうして、トゥーハストで起きそうだった騒動は、始まる前に終わったのだ。
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