虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

ドゥーハスト騒動 その03



「──古代兵器?」

「詳しくは王家にも伝わっておりません。すべてを知るのは国王のみでしたが、それすらも長い年月を経る内に忘れ去られてしまっていました」

「ただ、面倒なことに封印の解除方法だけは分かりやすく封印に記されてんだよ。それで姫様が狙われるって寸法だ」

「……王族の命ですか」

 よくある設定だ。
 一族に渡された石を渡すことで起動する天の雷、とかな。

「正確には『王家の血を捧げよ、汚れを知らぬ生娘の』と書いてあります。妹もいますが国外に出ていますので、今王家の女性はこの国に私しかいません」

「なるほど、それは一大事のようですね。しかしながら、それでもなお妹君が狙われるという可能性は?」

「この国でも随一の護衛がついていますのでそれはないかと。さらに言えば妹も妹でかなり強いので、並大抵の暗殺者でも傷一つ付けることはできません」

「そ、それはなんとも……」

 妹さん、武闘派なんだろうか。
 いったい何をしに海外へ行ったかは分からないが、この騒動妹さんがいないのが理由で起きたんじゃ?

「ちなみにですが、どうして王家の封印とも呼べるその言葉が知られたので? 普通、王族しか行けない場所に封印があると思っていたのですが……」

「昔の王族からそれを聞きだした者、その子孫が動いているのです。この国に強大な力で支配するのが目的か、はたまたそれで他国へ攻め入るかどうかは分かりませんが、少なくとも明るい未来は待っていません」

「俺たちの勝利条件はほぼ無いに等しい。全部の貴族を捕まえるわけにもいかねぇし、それこそ封印の原因をどうにかするぐらいしかやりようがねぇんだよ」

「それをしてしまえば元も子もなく終わり、解き放たれた存在が想像もできないナニカをして国が終わるでしょう」

 ハードな条件ばっかりだな。

 こっちは姫様血を一定量(致死量)持ってかれたら負け、相手はどんな手を使ってでも封印を解放すれば勝利。
 参加者のほとんどは敵側で、どいつもこいつも邪な理由で血を狙う。

「封印、解除した方が早く感じられてしまいますね……」

「俺も姫様の命が係ってねぇなら正直解放してもいいと思う。けど、王じゃなくて姫で満たせって文が命を保証してねぇ」

 王家の血、という文章であれば、王様が数滴垂らして解放──そして起動ぐらいのノリで行けただろう。

 しかしそこを姫様、自身で封印されたナニカを操作する必要のない者が捧げる対象にならば話は別だ。
 あえてそうした理由があり、そこに死が待ち受けている可能性は濃厚だ。

「──とりあえず、封印のある場所を教えてもらえませんか?」

 そんな中発したこのセリフ、はたして二人にはどう捉えられるだろうか。


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