虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
魔族について
「さて、次は魔族に関する話だったな……お前さ、ぶっちゃけどこまで魔族と関わっているんだ?」
「そうだな……対話して、友として扱われているな」
「……やっぱ異常だよ、こいつ。まだ誰も到達してねぇよ、その域には」
「そうなのか? 瑠璃がアンデッドの子供がなんとかだとか言ってたし、魔族とも友達にはなれるだろ」
というか瑠璃の方が凄いだろ。
その後、さらに奇跡的な出会いを繰り返しているらしいし。
俺はゲームの黎明期を、開拓と試練で潰していたというのに……何をしているんだか。
「まあ、異常なのはいつものことだから気にしないとしよう。魔族についてだったな、そろそろ説明を始めよう」
「……ああ、頼む」
言い方へ無性に腹立つが、訊いている側なのでどうにか呑み込んでおく。
「まず魔族、あいつらは高濃度の魔力発生地帯で育ったことから一部が魔物化している人間だ。つまり、最初は人と変わりはしない存在だった」
「俺が最初に会った魔族は、魔物扱いしたらだいぶ怒ったけどな」
「人間に向かって猿扱いすれば、ゴルファー以外キレるだろ」
最後のたとえは別にして、それもそうだと納得がいく。俺もキレるな。
「そんな魔族は何代も血を重ねていき、今では人間とは一次元違う個体になっている。膨大な魔力量、高い身体能力、特殊な魔物由来の能力、どれも人にはない優れた力だ」
「それで戦争か? 浅はかすぎないか?」
「神への報復ってヤツらしい。最初の内は人間と同じ扱いだったんだが、途中から神に見放されてヤバくなった。それ事態は別の神が助けることでどうにかなったんだが……」
「邪神、もしくは悪神だったから事情はさらに悪化したと」
「まっ、そういうことだ。邪神の眷属として扱われて、人間たちに狙われる。昔は相当な数が殺されまくったらしい。だから今、再び叛意を翻すってわけだ」
要するに──親に捨てられて別の人に拾ってもらったけど、その親が後から才を見せた子供を妬んで一家を狙って、何かがあったから報復活動中ってことか。
事情が込み入ってるなー、やっぱりアイプスルに居た方が楽なようだ。
「ま、これで終わりってことで。お前にとっての本題──たぶん魔族を従魔扱いできるかどうかだろう?」
「偽装として、だがな。普通に町に入れるのは無理みたいだし、せめて嘘でも俺の僕として誤魔化して行かせてみたいんだ」
「残念だが、無理。魔物としての力は持つがそれでも人だ。パーティーメンバーとして加えることはできるが、従魔は無理だ」
「そっか──」
「ただ、隷属の首輪ってアイテムを使って奴隷っぽくしておけば大丈夫だろ。それか隷属印っていうヤツでもオッケー」
「! さすが拓真だな。今度EHOで見つけたら、最上級の酒をプレゼントしてやるよ」
「……どうせ会う気ないだろ」
まあ、そうなんだけどな。
こうして話し合っていると、電車は目的の駅に到着する。
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