虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
器創り 後篇
作業は難関なことだらけであったが、全能で万能な力を一時とはいえ使っていたので、どうにか完了した。
「──これが、新たなお前の器だ」
《おお、さすが旦那様です。やはり旦那様のそのお力は異質なものでございますね》
「そうだな。けど、細かいことはまだ後で考えればいいんだ。今は『SEBAS』に新しい体ができたことを祝おうじゃないか。な、カエン」
「はい! おめでとうございます、『SEBAS』様!」
《旦那様、カエン……》
俺たちは作り上げた人形の前で、笑いあっていた。
名前のモデルがあの執事なので、最初は老人にしようと思ったんだが……ここはあえて子供にしてみました。
年齢はショウやマイよりも少し上、中学生というお年頃な設定にしてある。
性別に関しては無論男……ここでセバスが女という邪道は選ばないさ。
「これからはローマ字で『SEBAS』じゃなくて、カタカナでセバスだな。……なんだか、アルプス関係のお家に迷惑をかける気がするから変更で」
「物凄い理由ですね」
足が不自由な少女が生まれた家ですね。
こっちの世界に生まれていたら、あれは最初からどうにかなっていたのかな?
《せっかくの機会ですし。旦那様、この状態の際は『SEBAS』のままでよろしくお願いします。旦那様に付けていただいた、大事な名前でございますので》
「ああ、任せておけ……よし、『セバヌス』にしよう」
「あの、あまり変わっていないのでは……」
「カエン、もともと『SEBAS』は執事を目指していたんだ。今さら名前が変わったとしても、『SEBAS』の本質は何一つ変わりはしない。俺に、俺の家族に仕えてサポートを行ってくれるある意味家族なんだよ」
ちなみに『セバヌス』とは、ただ言い方を変えただけのセバスチャンである。
大丈夫、ドS令嬢にも不死の王にも迷惑はかけてないからさ。
受肉、これは意外とあっさり終わる。
「──これが、旦那様のお創りになられた体でございますか」
「違和感はあるか? プログラムにいくつか制御用のものが組み込まれているから、邪魔だったら取っ払ってくれ。セバヌス自身が動けなくなったときようだ」
「では、それを停止させましょう。…………だいぶ、望むように体が動くようになったようです」
緊急時には自動転位プログラムが作動するとはいえ、強いジャミングを受けて体の制御が効かなくなる場合を想定してのものだ。
簡単な意思を送るだけで既定の動きをするので、逃げるだけなら簡単にできるぞ。
「さすがセバヌス様! すでに使いこなしております!」
「いえいえ、これらはすべて旦那様がお創りになられたこの体の恩恵でございますよ」
スムーズに動き、滑らかな礼儀作法を行っている。
……これならすぐに、大車輪もできるんだろうなー。
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