虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
祝い
「そうか……やっぱりか」
「ええ、予想はしていたけど……ここまでの結果になるとは思ってもいなかったわ」
「これも全部、仕組まれたんだろうか」
暗い部屋の中で、四人の男女が話し合う。
大人の男女が一組と子供の男女が一組、ソファに腰を沈めて語り合っていた。
……まあ、俺たち家族の会議をちょっと盛り上げてるだけだが。
「けどさ、これ全部父さんのせいだろ?」
「……俺のせい?」
「そうね。翔とお母さんはともかく、私が裏に入れたのは間違いなくお父さんの仕業だと思うわ」
「翔、舞。お前たち、いくらなんでもそこまで父親を煽てなくてもいいんだぞ。──いくらお小遣いが欲しいんだ?」
「じゃ、じゃあ──」
バシンッと軽快な音が翔の頭から鳴る。
ハリセンを握り締めた舞が、翔を全力で叩いたからだ。
「あらあらアナタ、臨時のお小遣いを勝手にあげるのは駄目よ。それより話を戻しましょうね──ランキング優勝、おめでとう!」
『おめでとーう!』
電気をパッと点け、持っていたクラッカーの紐を引っ張る。
パパンッという音と共に、紙吹雪が中から飛びだしていく。
「翔が物理、瑠璃が支援、そして俺と舞が裏である死亡とソロか……。調教した魔物はカウントされなかったのか」
「うん、そうみたい。お父さんは死亡数……どれだけ死んだの?」
「…………本当に訊きたいか?」
翔と舞は即座に首を横に振る。
瑠璃だけはどちらにも振らずに笑っているみたいだが……正確な数が分からないから、教えられないんだよな。
「俺は他にも生産と冒険、それに裏の支配も優勝したけど……それはどうでもいいか」
「さすがアナタね! 冒険には入賞したけど優勝はアナタだったのね!」
「はははっ! まあな……って、どうしたんだ? 翔、舞。まるで父さんが突然スーパーマンになったみたいな顔をして」
冴えないサラリーマンだって、F先生にかかればヒーローになれるんだがな。
「そんな顔はしてないんだけど……え? 父さんが冒険の優勝? いや、生産は隠しているのバレバレだったけどさ。冒険も?」
「お父さんが無駄に秘密を持って、カミングアウトする瞬間を楽しみにしているのは知っていたけど……驚きだわ!」
「お前らの言葉の棘の方が驚きだ」
これが反抗期というヤツか、なるほど……道理で俺の目から塩辛い液体が零れ出てくるわけだな。
「というわけで、ほとんどの優勝者がこの家に居るという凄い展開。俺も生産で優勝するのは確定だったから気にしてなかったけど、まさか他も取れるとは思ってもいなかった」
俺自身、アイプスルに引き籠もっていればたぶん受賞しなかっただろうしな。
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