虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

対応方法



「そういえば『超越者』としては、権能を奪う能力者をどう考えているんだ?」

「ほとんどの者は、自分の権能が狙われない限りは放置する予定だな。良くも悪くも、自分さえよければいいと考える我の強い者たちが多いからな」

「そうか……」

「私もまた、国の者に被害を及ばさない限りは傍観しようと考えていたのだが……奴らは侵略を行った」

「そう、だな……」

 今回【魔王】と会えたのは、そうした一連の騒動があったからこそだ。
 実際の被害はなかったようだが、それでも攻めてきたことを否定する余地はない。

「わざわざ魔族領まで向かい、攻め滅ぼす気はないが……そう何度も、奴らを見逃すわけにはいかない」

 そうすれば、必ず被害が起こるだろう。

「エリクサー、売ろうか?」

「たしか……『錬金王』の特権だったな。すでに会ったようだな」

「お蔭様で、だけどな」

 むしろ、作ることを求められていそうだ。
 できるだけ情報を頂いているが。

「では少し、対価はいくらだ?」

「必要ない……と言っても、そっちは納得しないか。魔術に関する本か魔術のスクロールでもあればくれ」

 即座にそれらを用意する『騎士王』。
 俺もまた、体の欠損が再生する程度のエリクサーを数本取りだして渡す。

「──感謝する。これで少しは無意味な死を止められるな」

「増血効果もあるらしいけど、部位の再生にエネルギーを消耗する。飲ませる前か後に栄養を補給させておけ」

「了解した」

 そう言い、串焼きを食べ終えた『騎士王』は立ち上がる。

「ではまた、今度もこの場所で」

「ああ、できるなら仕事をサボることなく来てくれよ」

「…………ではまた、今度もこの場所で」

 ツッコミは入れなかった。
 どうせ『騎士王』も、そういった理由で二度目を言ったわけじゃないだろうし。

 転移の魔術を使った『騎士王』は、光の粒子と化して消えていった。

「さてさて、俺もそろそろ動こうか」

 イベントの残り時間もそう長くはない。
 何もしないままでは、メールなど生産関連しか来ないだろう……生産に関しては、ほぼ間違いなく来ると確信しているのだ。

「というか、俺の討伐数の中にドローンやカエンが倒した数って含まれるのか? カエンは完全に自我を持っているし、ドローンは俺じゃなくてプログラムと『SEBAS』による遠隔操縦だったからな……」

 そうなるともう、まさに微妙なところだ。
 装備したアイテムで倒した、というならばまだしも、完全に俺の手から離れたアイテムが勝手に倒したということだしな。

「もう一度、巡るかな?」

 それから残り時間が終わるまで、再び色んな場所で色んなことをやってみた。
 ──そして、終了の時刻となる。


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