虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
魔族領
どれだけ飛んでいただろうか。
いくつか質問を重ねてみたが、【魔王】に関する情報以外はだいたい教えてくれた。
そうして集めた情報を纏めていると、いつの間にか魔族の領土に辿り着く。
「こんなに簡単に魔族の本拠地を晒して、本当に大丈夫なのですか?」
「訪ねてきた者の言葉ではないな。特定の者しか通れない結界がある。『超越者』は私といなければ、ここを通ることは不可能だっただろう」
「なるほど……」
死亡による全干渉無効化を使えば、たぶん通り抜けられるだろうな。
すぐに超小型ドローンを宙から落とし、その結界がある場所へ向かわせておく。
識別結界に関する情報がほしいからな。
「それで……あれが魔王城ですか」
「そうだ。我らが王にして、【魔王】であらせられるお方が住まう城だ。本来ならば、休人であろうとも決して普人を入れる場所ではないのだがな。『超越者』だというのならば話は別だ」
「そうなんですか……」
たぶんだが、餌として向かい入れるのではないだろうか。
特に『騎士王』が来れば、もうパレードぐらいやってくれると思う。
それだけ『騎士王』の権能は、持つ者に無限の可能性を与えるからな。
「安心しろ、こちらとて招いた客人に狼藉を働くほど落ちぶれてはいない。『超越者』の振る舞いが【魔王】様の寛大な心を痛める程に傲慢なものであれば……話は別だがな」
「き、気をつけます」
どうしようか、異文化の風習……それに魔族のものなんてまったく学習してないよ。
まあ、先にその旨を伝えてもらおうか。
◆ □ ◆ □ ◆
城の庭っぽい場所にそのまま着陸すると、ワイバーンを係の人っぽい者に任せていた。
竜舎的な物があるらしく、乗らない時はいつもそこで待機しているらしい。
「待たせたな、では向かおうか」
「はい、お願いします」
ゴゴゴゴゴッと重々しく門が開き、俺と魔族の男を向かい入れる。
中には紅い絨毯が真っ直ぐ敷かれており、俺たちの向かうべき場所を示している。
「……あの、普段からこんな感じで?」
「そんなはずなかろう。『超越者』が来るということで、盛大に迎えているのだ」
「……は、はあ」
問題は絨毯の側面にあった。
魔族たちが絨毯という一本の線に平行になるように並び、俺たち……というより俺をギロリと見ているのだ。
結界を張っているのでどうにか死なずにいられるが、もしそうでなかったら……残機がいくつあっても足りないな。
「では行くぞ、【魔王】様がお待ちだ」
「は、はい」
そして俺たちは魔族のアーチを潜り抜け、巨大な扉の元へ向かうのだった。
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