虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
カムロドゥノン その08
貢献イベントの最中、エルフの隠れ里を襲おうとした魔物の群れを率いていた者──魔族が俺の前にいる。
あのときの魔族と同一人物なのだが、実は人員不足なのでは? と思えてしまう。
《『騎士王』や円卓の騎士たちの元へ飛ばしたドローンが、各地で別の魔族を観測しています。特に『騎士王』が守護する場所にはかなりの数が向かっていますので、おそらくその可能性は低いのかと》
つまり、前回の作戦失敗で重要拠点への侵攻を認められなくなったのか。
左遷、ではまだ無いんだろうけど……魔族の社会情勢を訊くのは、なんだか嫌になってきた気がする。
「お前はいったい、何者なんだ」
「休人、『超越者』、ただの普人。お好きなようにお呼びください」
「そうか……。『超越者』、今はそう呼ばせてもらおう。私のことも、魔族とだけ言ってくれれば充分だ」
「では、こちらも魔族さんと呼ばせていただきましょう」
社交辞令の挨拶も終わり、交渉を進めて行くことになる……が、その前に。
「──そちらも魔物の方々、妙に殺気立っていますよね? 抑えてもらえるよう、言ってくれませんか?」
「すまないが、少し我が儘な者が多くてな。上司である私の言うことも訊かないのだ。もしかしたら、何かそちらに迷惑をかけてしまうかもしれないが……広い心で許してやってほしい」
獰猛な瞳を爛々に輝かせ、今にも俺を食べてきそうなコイツらを許す?
いやいや、たとえ襲われてから謝られて、それを許してもまた食われるって。
たぶんそれ、ほとんど意味のないループアクションだからね。
「──先方が、そう仰られるのなら」
しかし、伊達に社会の歯車に組み込まれているわけではない。
結界を展開し、上にドローンを配備することで対策はバッチリにしてある。
もし襲ってくるようなら、正当防衛を謳って全力で反撃しよう。
意外にも襲ってくる魔物は一匹もおらず、ただの牽制であったことが発覚する。
こっそり、魔族の言語で作戦中止を告げる暗号っぽいのをやり取りしていたのでほぼ間違いない。
うちの星に居る魔物同様、知性は高いようだった。
「──なるほど。そちらの国にかつてこの国の王が攻めてきた、と。それを建前にするには、いささか足りないのでは?」
「私もすべてを訊かされているわけではないのだ。知り得ているのは、あくまでここまでである」
どうやら、いつかの『騎士王』が本格的にこの領土を攻められたそうだ。
その際魔族を殲滅した……だが、その中に命乞いをしたが殺されたお偉い魔族様がいたようで。
それを大義名分に、正当な戦いだとしているようだ。
……誰もそれを、本当のことだとは思ってはいないようだが。
「そうでしたか……申し訳ありません」
「構わないさ。それより、前回受けた話、一度報告させてもらった」
「おや、宜しかったので?」
「ああ、次に『超越者』と会った魔族が、言伝をするようにとの指令もあったからな」
「それで、お答えは?」
そしてこの後、ここに攻め入っていた魔族さんは引き上げることになる。
俺もまた、倒した魔物の素材をすべて集めた後にカムロドゥノンに戻った。
「……さて、忙しくなるな」
これからの予定を考え、つい笑みを浮かべてしまう俺なのだった。
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