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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

カムロドゥノン その07



 帰還命令を受け、カエンが戻ってくる。

「ただいま帰還しました」

「お疲れ様、カエン」

《ご苦労でした、カエン》

「マスターも『SEBAS』様も……ありがたきお言葉です」

 実際のところ、カエンの活躍は目まぐるしいものだった。
 不可視モードからの大量暗殺──俺が命令していなければ、そのままの勢いで彼と戦っていただろう。
 
「すまないな。あれだけの相手にいっさい干渉を許さず、周りだけを倒せだなんて酷な命令を出してしまって」

「いえ、『SEBAS』様による補助もありましたので。その程度のことならば、造作もございません」

「…………そ、そうか」

 稼働中の演算をすべて止めた場合、おそらく今の『SEBAS』であれば、擬似的に未来演算すら可能だろう。
 それは分かっていたのだが……いっさい他の演算を止めていない状態だったぞ、今回。

《旦那様、あのときの素材を有効に活用した結果でございます》

「あー、うん。そうか、それは何よりだ」

 お土産に『超越者』の所でいくつか見つけたアイテムを持ち帰ることはあったが……どれだ、いったいどれが原因なんだ!

「──ゴホンッ。カエンの活躍もあり、ほぼすべての魔物を討伐できた。こちらの策を通すためにも、なんとしても逃すわけにはいかない。……カエン、奴らの後ろに回り込んで逃さないようにしておいてくれ」

「承りました」

「『SEBAS』は俺とカエンのサポート。ドローンを使ってくれ」

《畏まりました》

 二人に指示を行い、俺自身はゆっくりと前へ進み出ていく。

「それじゃあ、第一フェイズ──開始だ」

  ◆   □   ◆   □   ◆

「チッ、やはり『超越者』は面倒だ。ここを放棄し、別働隊と合流するべきか」

 男は戦況を把握し、そう呟く。

 子供──いや、子供型のゴーレムの襲撃を受けて多大な被害を被った。
 すでに指揮官クラスの魔物以外は全て死に絶え、指の数ほどしか残っていない。

「あのゴーレム、あれも奴の配下なのか。奴はいったい、何が権能なんだ」

 ただの生き死にを操る力でもなく、宙を飛ぶ謎の魔道具まで使っていた。
 さらには、錬金術の技術でもあるゴーレムの作成まで可能としている。

「これが休人の力、とでもいうのか。ありえない、これではまるで──」

「ここで私がセリフを奪ってみれば、まるで創作物のようだったんですけど……思い当たることもありませんし、的外れな回答を聞きたくもないので割り込ませていただきます」

「な、どこから現れた!」

 彼の独り言に返答を告げたその男──ツクルは、ニコリを笑顔を浮かべて驚愕する彼に挨拶を行う。

「──お久しぶりです、魔族のお方」


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