虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

カムロドゥノン その06



「うんうん、ドローンも順調に作動しているな。『SEBAS』、残量は充分か?」

《魔物を殺している分、大気に広がる魔力がありますので。効率良くできております》

「ああ、その分があったな」

 ドローンによる空爆は、想像以上に上手くいっていた。
 籠めた弾のコスパが悪いのですぐに弾切れになると思いきや、魔力の供給源が大量に転がっていることを忘れていたよ。

 何発撃っても、魔物がそれで死ぬ限り補充が可能なようだ。

「だけど、それも最初だけだよな」

《はい。途中の個体から威力が減衰しているのが確認できました。おそらく、耐性か軽減系のスキルか性質があるのでしょう》

「進化個体、ってヤツかな。前線にいた魔物よりも強いんだろうな」

 魔物の進化に関する情報は、まだ詳しく調べてないんだよな。
 個体別のデータなど、面倒で分かりづらい情報が多そうだ。

「ドローン部隊の魔法の威力を高め続けてみるか。魔法の威力検証にもなる。魔力が尽きた機体から帰還、それ以降は──すべて任せておこうじゃないか」

《畏まりました》

 さて、どうなるんだか。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「……どうやら、威力はそれほどでもなかったようだな。【夢魔賢者】や『騎士王』対策に、耐性の高い魔物を連れてきていて正解であったか」

 空に舞った兵団は消え去り、再び青い空を拝めるようになった。
 魔族の男は大量に減った軍勢の数を指揮個体から確認し、そう呟く。

「奴の権能は……いったい何なんだ。『超越者』が司れる権能は一つのみ、万能を『騎士王』が持つ限り、同様の権能を他の者が持つはずがない」

 故に彼らは、『騎士王』の領土を攻めた。
 崇拝する【魔王】の力は、万能の権能を手に入れる術を有していたのだから。



 神経を尖らせていたからこそ、その事態に彼はすぐに気づいた。
 平時であれば、見逃していたかもしれないそれは、少しずつ確信を見せていく。

「……どうした、なぜ進まない」

 進軍の速度がゆっくりと減衰していた。
 指揮個体に状況を把握させれば、再び魔物の数が減っていることを知る。

 先ほどの空爆を考え、普通ではない攻撃を行っていると考える男。

「どこだ、どこにいる……そこかっ!」

 魔法による探知や、五感強化による感知で索敵を行っていると──怪しい影を一つ捉えることに成功する。

「おや、もうバレたので? さすが上位個体と言ったところでしょうか」

「何者だ、貴様」

 奇天烈な格好をした子供らしき者が、血の海の中で独り立っていた。
 子供は男に気づかれたことにさほど驚くこともなく、鮮やかな礼儀作法を行って男に挨拶をする。

「初めまして、私の名前はカエン。貴方がたへ終わりを齎す者でございます」


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