虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
カムロドゥノン その03
円卓に近づいたものの、結局席は円卓にはないので傍観しているだけだ。
ただ、前回来たときに見た会議と異なり、しっかりと声が聞こえる。
「…………」
だがまあ、俺にできることは何もない。
企業戦士として戦場に出ているが、持つのは剣と盾ではなくペンと名刺だ。
戦場に関する話し合いに参加できるわけもなく、ただただ黙って作戦などを理解しようと耳を澄ますだけ。
《なるほど。ただかき回すだけでなく、一種の搖動でもあるのですか……それにこの配置は、容易には突破できない。もしや別の意図が隠されているのでしょうか》
俺は理解できずとも、『SEBAS』ならば分かってくれる。
身に着けている装置から、代わりに情報収集を行っていくれているのだ。
努力はしているつもりだが、さすがに軍に関する知識など持っていない。
俺は指揮官タイプではなく、愚直に突撃を繰り返すアホな兵士みたいな奴なんだ。
迷う必要などまったくない、上司からの命令は絶対順守の……今でいう、社畜だな。
(ま、頼んだぞ──『SEBAS』)
眠くはならないが、理解できない情報が多くなってきている。
どうしてそうなるのか、なぜそうするのかが意味不明な物となるのだが、周りはそれを正したり頷いたりしていた。
(もうお手上げだ……ついていけない)
そう感じた俺は、ただ目の前で行われる話し合いを暗記する作業に専念した。
◆ □ ◆ □ ◆
俺が守護するのは、『サロック』と呼ばれる町の南方らしい。
転移の魔術で飛ばされたので町の詳細はまだ分からないが、守備すべき場所はそこにいるのでよく分かる。
「こりゃあまた、なんとも不利な場所を」
《南方の岩盤地帯、サウスロックでサロックということです》
「ここならゴーレムを造れるし、隠れる場所が多いから大丈夫ってことか?」
《はい、私もそう考えて何も意見をしませんでした》
「正しいよ、というか口を挟めば余計に厄介な展開になることが目に見えそうだ」
例えばだが、それを言うなら一番守護が難しい場所を任せようととか、だだっ広い草原にしてやろうか? などだな。
装置を使えばどうとでもなることだが、魔族が現れそうな場所には行きたくない。
「死兵として挑むなら勝てそうだが、封殺されれば先の場所が破壊されるからな……あ、先に準備しておかないと」
予め飛ばしたドローンが見つけた町、そこへ追加で結界装置を持たせたドローンを送り込む。
油断をして、他者を巻き込むわけにはいかない。
万全の準備を整えて、迎えなければ……。
そしてしばらくして、遠くより大量の影が現れ始める。
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