虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
カムロドゥノン その02
今回は一度、城で話し合いを行ってから各自の持ち場に移動するらしい。
つまり転移魔術で向かった先は戦場ではなく、最終防衛線である『カムロドゥノン』となった。
俺をここに連れてきた『騎士王』は、支度があると言ってまたどこかへ消えた。
装備が戦闘用の物ではなかったので、恐らく戦支度を整えるのだろう。
「皆さん、お久しぶりです」
なので王の間には独りで向かい、そこで待ち受ける円卓の騎士に挨拶を行う。
ボタンで『騎士王』を連れ帰ってもらっている際、顔は会わせているけれど……ほんの一瞬だからな。
挨拶をしてみたが本当に忙しいらしく、会釈だけで挨拶を交わしてきた。
「──さて、どこで待つかな?」
円卓に座るのはご法度、しかし他に椅子は用意されていない。
まあ、椅子ぐらいは用意できるので問題ないんだけどな。
問題は、ここが王の間であり変な場所で待機するのがOUTな点である。
「…………まあ、適当でいいか。いちおう、対等な存在って言われているからな」
細かいことを考えるのは止めだ。
思考をフルに使うのは、これから始まる線上の中だけで充分だろう。
取り出した椅子を部屋の隅に設置して、俺は時間を潰していく。
そしてしばらくして、『騎士王』がこの間にやってきた。
すると、俺のときには作業を止めなかった円卓の騎士たちが、作業を中断して忠誠の構えを取る。
「待たせた……『生者』、それはなんだ」
「何って──リクライニングマッサージチェアですけど」
ウィンウィンと駆動音を鳴らし、俺の全身が解されていた。
俺の体にジャストフィットした椅子となので、非常に座り心地が良い。
「……仕舞え」
「はい」
『騎士王』が来た今、わざわざ座って待つ理由も無くなった。
彼らと同じポーズは取れないが、せめて直立して待とうではないか。
『騎士王』はこの間にある円卓の椅子の内、上座に置かれた少し大き目な椅子に座る。
これで席は満席となり、座る場所はどこにもないのだが──
「『生者』、其方も座るが良い」
「え? いや、椅子は仕舞ったんだが……」
「用意周到な其方のことだ、質素な椅子も所持しているだろう」
そこまで言われると座らざる負えなくなるので、一番最初に作った、思い出の椅子を取りだしてそれに座る。
「『生者』、もっと円卓に近づけ」
「いや、さすがにそれは気が引けるというかだな……」
「この戦いの間、私たちは同じ目標を相手に戦う仲間だ。そうも除け者にしては、こちらとしても問題になる」
「なら、仕方ありませんか」
せめてもの抵抗で、向かい側の席に座ることにする。
それで充分だったのか、『騎士王』の頬が少し緩んでいた。
そして、円卓会議が始まる。
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