虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
寄付
「あっ、おっちゃん!」
「よう、少年。元気にしてたか?」
そう、俺が向かったのは孤児院。
三つ目である、心を満たす場所である。
「最近は当たり屋なんてやってないよな?」
「お、おっちゃんにやろうとしたとき以外、そんなことしてねぇよ! それより聞いてくれよ! ここに金が回るようになって、アイツらがいつも満腹になるまで食べれるようになったんだ!」
「良かったじゃないか。これで俺も、晴れて食べ物のおじさんを卒業だ」
俺にそれを語る少年の顔は、とても楽しそうなものである。
ちなみに、いつもここに来る度に『食べ物のおじさん』呼ばれると、俺の表情は一瞬辛いものに変化するぞ。
「……なあ、おっさんが寄付したんじゃないのか?」
「おいおい、俺が他人に金を払えるような生活をしているように見えるか? 今だって、ギルドに行ったらお前に渡せるクエストは無いと言われたんだぞ?」
「そうだよな、おっちゃんはおっちゃんだよな。そりゃあないか」
グハッ! 心に深刻なダメージが。
してますよ、そりゃあしてますよ寄付を。
ギルド長に頼み、俺のポーション納品代の一部を回してもらえることになった。
当然、ここの神父さんにはバレているが、内緒にしてもらえるとのことなので、こうして否定し続けている。
……そもそも、完全に俺だと疑っている奴なんて一人もいないけどな!
「それで、今日は何をしに来たんだ? 前に頼まれたヤツはまだ終わってないぞ」
「それの確認もあるけど……今度は、また別のことを頼みにきた。先に、神父さんに頼んでいいかの許可を貰いたい。今日はここにいるのか?」
「ああ、どうせあっちの部屋で話をするんだろ? 先に神父様に話を付けといてやるよ」
少年は詳細も聞かずに、神父さんの居ると思われる場所に走っていった。
俺はそれに少し笑い、例の場所に向かう。
◆ □ ◆ □ ◆
「──と、いったことなんですけど……どうですか?」
「あの子たちがやりたいと言うなら、構いませんよ」
移動した先は例の神像がある場所。
そこにある椅子に座り、像を拝みながら話し合っていた。
「いつもすみませんね。寄付もされているのに、こうしたことまで」
「冒険者なら、装備を整えたりしていると金が無くなるものですけど……私はその、使いどころもなく余ってしまって。それならば、まだ若い子供たちの未来のために使った方が良いと思っただけです」
そう答えてから、今回の頼みごとに使うアイテムを纏めた袋を手渡す。
「こちらにメモと材料、それに器具が入っています。こうした切っ掛けで、生産ギルドに加入してくれると嬉しいんですけどね」
「男の子たちは、冒険に心をくすぐられていますからね。女の子たちでも、最近は休人の方々に憧れてか冒険に夢中ですけど」
「ハハ……、生産もいいんですが」
「大切さは、ツクルさんのお蔭でしっかりと理解していますよ。二、三人……は、ツクルさんのようになりたいと言ってましたしね」
「そう言ってもらえると、何よりです」
話を終え、神像に祈ってから俺は孤児院を出る。
さて、次は何をするかな?
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