虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

色付き鑑定



 通天の晶洞

「……おおっ、色付きだ」

 強い魔物が居る場所、と考えて『仙郷』にあるダンジョンにやってきた。

 現れた魔物に鑑定を行うと、水晶の機能が正常(?)に作動して鑑定結果がカラーで表示される。

「けど、ちょっと狭いかな? 『幼子の揺り籠』みたいに広いダンジョンだったら良かったのに……」

 初代【仙王】の嫌がらせなのか、道はとても狭い。

 長柄の武器はだいたい引っかかり、あくまで仙丹を駆使した戦い方を強要している。
 ……いちおう、そういった目的で造ろうとしたダンジョンらしいからな。



「だから、ここに魔物を出してくれよ」

『何を言ってるんだ、お主は』

 一番広い場所、それはダンジョンの主が待ち構える場所だ。

 なのでそこへ向かい、直接ダンジョンの主に交渉を行う。

「簡単に言うと、大量の魔物を広い場所で倒す練習をしたい。どうせ暇だろ?」

『むぅ……確かにそうだが』

「お礼はこれ、ダンジョン強化に使える大量の魔核。これがあればフィールドを一つ作り変えることくらい──」

『任せろ、すぐに用意してやる』

 目の色を変えた初代【仙王】は、すぐさまこの場に魔物を召喚していく。

 俺の用意した魔核があれば、だいたい言った通りのことができる。
 今召喚を行っている分も含めて、すべてを補えるぐらいのエネルギーがあるのだ。

「こりゃあまあ、なんと大量に出したな」

『軍勢の方が低コストだからな。ほれ、さっさと倒してみせろ』

 用意した魔核を持って、初代【仙王】はコアのある奥へ進んでいく。

 俺が戦っている間に、DPの補充を行うつもりなんだろう。

「──よし、それじゃあやりますか」

 目の前で溢れかえった魔物に向け、仙具を構えて戦いを始めた。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「それで、改変は終わったのか?」

『うむ、万全だ。空いた空間を拡張し、お主のような者を収容する場所を造った』

「それはありがたいな。……それなら、もう少し足しておこうか」

『助かる。連絡にはアレを使わせてもらう』

「そのための物なんだ、別に気にすんなよ」

 アレ、とはダンジョンの外と繋がる連絡装置のことである。

 緊急時、ダンジョンと『仙郷』とを繋ぐための連絡手段。
 番となる装置を、王宮に置いてある。

『これからどうするのだ? 奴らに会いに行くのか?』

「いや、魔物を狩りに来ただけだからな。特にそういう予定はない」

『せっかくだ、会いに行ってやれ。装置の点検も兼ねてな』

「……まあ、別にいいか」

 後付けの理由ぽかったが、断る理由もないので『仙郷』に行くことを決めた。

 用意してもらった帰還陣を使い、『闘仙』さんたちの元へ移動する。

 ──そして『闘仙』さんと【仙王】からなぜか熱い歓迎を受けた後、再び転移した。


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