虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
新大陸
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≪S11W6が解放されました≫
《初討伐報酬『泡沫の蛸頭巾』を入手しました》
《初ソロ討伐報酬『安住の蛸壺』を入手しました》
エリア解放者として名を刻みますか?
〔YES〕/〔NO〕
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「NO! お断りだ!」
全力で〔NO〕ボタンを押すと、アナウンスと同時に現れたパネルが消滅する。
誰が好き好んで名を出すなんて……あ、これをやれば、ルリたちの誰かが俺の居場所に気づけたかもしれないんじゃ……。
「…………さ、さぁ次に行こうか!」
ありえない仮定などどうでもいい、起きてしまったことも忘れておこう。
それより今はエリアの先へ、目指すは海を渡った先にある新大陸だ!
◆ □ ◆ □ ◆
S13W6
「ついに、ついに新大陸だー!」
一区画超えた先に、ようやく大陸を発見できた。
ボートを寄せて着陸すると、両手を高く上げて喜びのポーズを取る。
何もない海ばかり見ていたせいか、新鮮な景色に飢えている……というわけではない。
それなら『アイプスル』にたくさんあるので、いっさい困ってません。
「新たな冒険が、俺を待っている!」
つまりはそういうことだ。
ゲームでも、舞台が変われば同じ設定でもイベントは大きく異なる。
そりゃあ当然だ、別の環境なのだから独特の文化も異なっている。
ならば特殊な思想家も生まれる強さの性質も全然違う、なぜなら違う場所だから!
「思考がグチャグチャだな……別の意味でだが酔っぱらったか?」
またこの大陸に来る間に、アドレナリンがバーストしてハイテンションになった。
ガトリングスタンガンを連射し、サンダーフレームで痺れさせ、アイテムキャッチャーがそれを回収。
何度も現れた魔物を相手に行いながら、今日我々は彼の地に着いたのであります!
しばらく休んで、冷静さを取り戻してから『SEBAS』と連絡を行う。
すでにドローンは起動済みである。
「『SEBAS』、調査のほどは?」
《ここから少しした場所に、小さな漁村があるようです。言語はすでに解析を始めていますが、既存の物に該当する言語はありませんでした》
「大きさの方は?」
《地球で例えるならば、オーストラリアほどの大きさかと》
海外旅行に行ったことはないが、地図をイメージする限り結構デカいと思う。
周りは凶悪な魔物に囲まれているものの、船も見つけたらしいので鎖国はしていないようだ。
「つまりこれは、ビジネスチャンスだな。行商人として、しっかり働くとするか」
貿易をしているのなら多種族の品を扱う良さに、気づく者がいるかもしれない。
そうした輩に売れば、たぶんここでもやっていけるだろう。
「……もちろん、『超越者』にバレないようにだけど」
この大陸にも、定住したり放浪を行う『超越者』がいるかもしれない。
あまり目立たないよう、こっそりとだが活動していこう。
矛盾する思いを秘めて、俺は新たな大陸での一歩を進めていった。
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