虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

VS巨大タコ



 S11W6

 行商人プレイもいいが、もういっそのことエリアを解放してみるのもどうだ?
 変なことを思えたので、とりあえず行ってみることにした。

 相も変わらず正方形のキューブが海中で漂い、解放される瞬間を待ち望んでいる。

 そんな様子をボートの上から見てから、俺はポケットの中からある物を取り出す。

「マジックハンドー(濁声)!」

 オオサンショウウオの経験から、射程距離がほぼ無限なマジックハンドを作りだした。

 義手としても使え、生体神経を接続しているので、プレイヤーが触っていると誤認させることもできる。

 ゆっくりと海の底へ沈み、ついにキューブへ触れる。

「お、おわっ!」

 瞬間、激しい波に襲われる。
 安定装置が作動しているため、俺に揺れはないがそれでも驚く。

 何かが海中から現れる様子は、映画みたいで興奮するからだ。

『QUUUU!』

「タコって鳴くんだ……」

 別にイカと特性が合体しているクラーケンというわけでもない、ただ超巨大サイズのタコが居る。

 しかし、タコの特徴は様々な種類から受け継いでいるみたいだ。
 テナガダコやミズダコ、ヒョウモンダコなどいろいろと特徴が多く見受けられる。

『QUUUU!』

「しかも配下召喚まで……全種類のタコが相手とか、タコパでもさせたいのか?」

 飛剣魚以上の数のタコが、海面から飛び出していっせいに飛びだしてくる。

「ボス戦だけど、これってどうやって倒せばいいんだろうか。──まあ、ポチッとな」

 音声コマンドではなくボタンを押して、ガトリングスタンガンを連発してみる……が、その膨大な数に圧されてボスまで届かない。

『QUOOO!』

「おまけに無限召喚、いやはや面倒になってくるなー」

 巨大タコが鳴くたびに、海中に魔方陣が生まれてタコが現れる。

 お蔭でたこ焼き屋は開店できそうだが、どうせなら勝ちたくなるよな。

「特殊兵装その3──サンダーフレーム」

 今度は音声コマンドによる起動。 
 使用した途端、周囲十メートルの海面にいたタコがいっせいに脱力する。

 名前で分かると思うが、結界の外側に強力な電圧を流すだけの機能だ。

 電気は水の中に入るとその強さを著しく減少させるので、十メートルまでしか効果を届かせることはできなかった。

「そしてそれを常時使い、ボスの所まで向かえば……殲滅の開始だ」

 近づけば近づくほど、タコは数を減らす。
 巨大ダコがどれだけ喚こうが、現実は変わることなく──十メートルの距離に届く。

『QUUUUU!?』

 HPバーが視えたなら、急速に減っていく生命力を確認できただろうか。

 悲鳴のような声を上げ、巨大タコは雷がごとき力に痺れていく。


 そして数秒後、目の前にお知らせと質問が表示される。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品