虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
錬金王 その05
しばらく『錬金王』と対話を行った。
彼女もまた、不老の身でさまざまな錬金の可能性を追求する生産者だったらしい。
そして辿り着いた一つの極地──人造人間の錬成。
それまでの生涯から『錬金王』の名を冠していた彼女は、理由は言わなかったがなんらかの意志を以ってそれを実行した。
ちょうどこの場所で、ユリルは誕生したと言っていた。
「だが、それが気に喰わなかったのだろう。本来命の創造は、神にしか許されない所業。わたしのような人の身でそれを行うことは、神に逆らうとでも思われたんだな」
ある日、自身の体に違和感を感じる。
妙に体が重く、錬金の腕も落ちていた。
それを危険な兆候だと察知した『錬金王』は、別の『超越者』に連絡を取って自らの状態を調べてもらい──呪いがあると知った。
体に少しずつ制限をかけ、じわじわと生命力を吸い上げる不老にも効く呪いだ。
「時間が無いと思ったさ。予め、錬金に関する技術はユリルに伝えてあった。『錬金王』の名は、あるアイテムを錬成できた物に対して、先代の『錬金王』が指名を行うことで引き継ぐことができた。自身の残り得る時間を計測し、その中でもっとも効率よくユリルにそれを伝えていった」
ユリルは『錬金王』が生んだ最高傑作。
錬金に関する技術も凄まじく、呪いが完全な形で身を蝕む前にユリルは『錬金王』を継ぐことに成功した。
それを見た『錬金王』は安堵し、カプセルの中で眠りに着いた。
呪いの侵蝕を完全な形で止める液体で身を包み、愛娘が自らのためにエリクサーを作り上げるそのときを夢見て。
「ユリルも頑張ってくれたようだが、やはり混沌蛙は難しかったか。あれは人造人間をも融かす劇毒を生みだすから、一番最後にしろという忠告は守っていたようだがな」
そんな材料を使うレシピしか、無かったんだな。
少なくとも俺がエリクサーを作った時、あのカラフルなカエルに関するアイテムはいっさい持っていなかった。
まだ他に、別のレシピが有るのだろう。
「改めて礼を言おう、新たな『超越者』である『生者』よ。うちの娘を救ってくれて。これは元『錬金王』としてもそうだが、一人の母としても礼を言いたい」
「いえ、本当に気にしないでください。出会いは偶然でしたが、もともと『錬金王』には会いたいと思っていましたから」
「……それは、個人を指す『錬金王』ではなく『錬金王』の名を冠した者を探していた、ということでいいのだな?」
「はい。そして今、私はこうして貴女と顔を合わせることができました」
さて……どうやって話を進めよう?
正直、もう限界だ。
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