虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

錬金王 その03



 再び移動、今度はかなり長い。

「師匠様は地下で眠っています。侵入者に狙われても大丈夫なように、厳重な警備が設置されてますので。ボク以外の者が入るのは、困難ですよ」

 途中、目に見える形でゴーレムが置かれていたり、壁と同化して隠れるゴーレムなどもいたしな。

 ユリルの歩く場所以外トラップだらけ……なんて場所もあった。

 その仕掛け自体は『錬金王』が用意していたらしいが、それを作動させたのはユリルだそうだ。

「大事なんだな、『錬金王』が」

「ボクの師匠様で、お母様ですから」

 ……はい、性別分かっちゃいました。
 なんだか最近、女性との出会いが多い気がするな。

 俺はルリ一筋であって、他に誘惑される気は全くないんだが。
 ……サ、サキュバスなんかが居れば、は、話は別だけどな。



 そして辿り着いた地下、そこには巨大なカプセルが設置されていた。
 中には不思議な液体が詰められており、そこで一人の少女・・の裸体が浮かんでいる。

「子供? 『錬金王』の年齢って……訊いたら不味いか?」

「師匠様は不老ですから。ですが不死ではないので、このような事態に陥りました」

 不老不死ってのは、プレイヤーみたいな奴らのことだよな。

 まさに死兵、そこに明確な利益さえあれば命すら顧みずに突撃するんだから。



「師匠様、今お助けします」

 ユリルがカプセルの周辺に置かれた台の上に、自ら作り上げたエリクサーを配置する。
 そこには魔方陣とカプセルに繋がる管が取りついており、どういった用途かがすぐに理解できた。

 エリクサーを入れた容器の蓋をポンッと開けるとユリルは、魔方陣の中心にポツンと空いた管に繋がる穴に注いでいく。
 同時に魔力を魔方陣に籠め、エリクサーに何かを付与してから送り込んでいる。

 エリクサーの輝きがいっそう増し、輝きは管を伝って少女の入ったカプセルに届く。
 すると、液体が同色に発光を始め、眠る少女を包み込んでいった。

「あとは、師匠様が目覚めるときを待つだけです──それしか、ボクにはできません」

「どれくらいかかるんだ?」

「師匠様次第です。すぐに目覚めるかもしれませんし、悪ければ何十年も……」

 ……うーん、そんなに待つのか。
 なら、もう諦める方がいいかもしれない。

「そうですか、では──」

 帰ろうか、そう言おうとした瞬間、カプセルから罅が入る音が発生する。

「師匠様!?」

 慌ててカプセルに近付くユリル。
 罅は少しずつ大きくなり、ついにはカプセルが耐えられない程亀裂になり──甲高い音と共に、内側から破壊された。


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