虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
錬金王 その01
「ここが……君の」
「はい、工房となります」
どうやってきたのか、覚えていない。
少年が案内すると言ってしばらく歩いていると、何かを取りだして振り撒いていた。
すると空間が歪み、奥に見える景色に変化が起きる。
少年はそれを気にせず、家に帰るような感じでその空間の歪みを通っていったのだ。
――そして、今に至ると。
少年の家は、いわゆる屋敷であった。
洋館のように視える屋敷には、かつて見た冥王の宮殿のような、至る所に死を予感させる物が置かれているようだ。
「君は……何者なんだい?」
普通の少年が、こんな場所を持っているというのも難しいだろう。
もともと疑念があったからこそ、俺は少年に毒袋を加工する様子を見たいと告げた。
俺の質問に、少年は丁寧な礼を取ってから挨拶を行う。
「あ、申し遅れました。ボクはユリル──ホムンクルスであり、『錬金王』と呼ばれる者です」
◆ □ ◆ □ ◆
「えっ、貴方も『超越者』なんですか!?」
「いちおう『生者』らしい。だけど、団体には参加しない予定だから、あんまり関係ないけどね」
「そ、そうなんですか」
普通の出会いができない辺り、今も昔も俺は運が悪いのだろう。
現在は毒袋を少年──改めユリルが、錬金術を用いて加工している様子を眺めている。
使う術式も魔道具も、俺よりも数段優れた物ばかり。
やはり錬金の王と称されるだけあって、実にためになる情報がたくさんだ。
「『生者』さん、『生者』さんも錬金を使われるのですか?」
「錬金、というより生産全般を行っているつもりだよ。錬金をしたかったからその毒袋を使おうとしたけど、特にあれじゃないと駄目ということは無かったんだ」
「そうですか……それでボク、というよりも師匠様に会いたかったんですか?」
「うん、できれば会いたかったかな。だけど居場所も分からなかったから、とりあえず錬金に関するアイテムがある場所を探していたら──あそこで会ったというわけさ」
師匠様、ユリルがそういった人物こそが、『騎士王』に渡された情報に記された人物であった。
なんでも自分という人造人間を作成後、可能な限り知識では伝えられない錬金術に関する情報を伝授し──病に伏せたらしい。
ユリルが行おうとしているのは、その病を治すアイテムの作成。
万物を癒す霊薬──エリクサーをその手で作りだすことだった。
(どうしよう、物凄く言いづらい)
ユリルがそれを語る姿は、親のために必死に頑張る子供を見ているようでもあった。
父としてそんな息子と娘を見たせいか、つい応援をして見守ってやりたいと思う。
だからこそ、出せなかった。
大量にストックされている、最高品質で生みだした携帯ポーションを。
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