虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
睡眠毒
「結構集まるんだなー。:DIY:で用意するアイテムよりは質で劣るが……まあ、それなりの物が手に入る」
そういえば、タクマに訊いた話の中に品質についてのものもあったな。
たしか……採取系のスキルが無いと、採ったアイテムの品質が落ちると。
それを持っていない俺だが、:DIY:が仕事をしているのか品質は変わらない。
一度『SEBAS』と実験を行っているので、それは確認済みだ。
「魔物の素材だけは、面倒だけどな」
それだけは自分で手に入れる必要があるので、素材に気を遣いながら戦わなければならない。
スタンガンを使えば火傷ができるし、錬成で攻撃すれば外傷が尋常ではないほどにできてしまう。
「ならどうするか……捕獲して、あとで住民に倒してもらうか?」
いつもの方法である。
串焼き屋の店主に渡す魔物以外は、いつも住民に討伐してもらっている。
俺の戦闘方法では、基本的に気絶による捕獲しか行えないからな。
解体はするが、その前段階である下拵えはやってもらっているのだ。
「捕獲なら、やっぱり毒を盛るかな? 幸いいろいろと持ってるし」
睡眠状態から回復するポーションの作成途中、さまざまな睡眠毒が生成できた。
中には致死性かつ即効性があり、体には影響がいっさい残らない夢の暗殺アイテムと化した物があるが……今は関係ないな。
「ま、やるだけやってみるか」
ポケットから取り出した試験管、それをこれまた取り出した腰に着けるタイプの試験管ホルダーに数本差し込んで移動を開始する。
効果がちゃんと、すべての魔物にあれば良いんだが……。
そしてしばらくして、もっとも効率的な素材の回収方法に涙を流す。
周囲には大量の魔物、状態異常を引き起こす大きめのカエルたちである。
伸ばした舌の先から液体を放ち、触れて相手を自分の体色にあった状態異常にする──というのを、たまにいたプレイヤーを見て確認した。
そんなカエルたちに、どうやって睡眠毒を盛るのか。
その答えは──結界に毒を塗っておく、であった。
「しかし、それがなんとも気持ち悪──オェエエエ……」
やってくるカエルのすべてが、俺にテラテラと妖しく光る粘液付きの舌を伸ばして舐め回してこようとするんだぞ。
これこそSAN値直葬だったのか、と放棄した思考で薄らと理解した。
「まあ、そんなわけで大量ゲットだな」
眠ったままのカエルをすべて片付け、再び霧だらけの湿地帯に戻る。
周囲にまだ魔物の反応はなく、やっと小休憩が取れる。
「──と思っていたんだが……誰かが追われてるのか?」
魔物の前を逃げる少年、進路方向に俺がいるわけじゃないので特に焦らないが、その追いかけている魔物に注目する。
「カエルの親玉か? なんかカラフルだし」
今までに見たカエルの色をすべてプラス、おまけに数色足したような混沌的なカラーをしたカエルが、少年を追っていた。
まあ、ボスキャラだな。
「助けがいるかもしれないし……追いかけてみるか」
助けが必要なら、あのカエルの素材を分けてもらえるからな。
打算的な考えの元、俺は少年の逃げた先へ向かっていった。
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