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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

ゴーレム作成



 アイプスル

「勝手に独学でやっている内に、おかしくなることってあるよな。だけど……失敗は成長のもとって言うし、まあこれも経験か」

『GUGYAAS!』

「なんでゴーレムなのに、発声してるんだろうか? というか、どうやって? 発声機能は付けた覚えがないんだが……」

 誰も居ない無人の荒野。

 作ったアイテムの実験用に、住民たちからはるか先に設置された未開発領域。
 そこで俺は、自身で考えた錬金術の実験を行っていた。

 それは、ゴーレムの生成。

 錬金術と言えば錬成、その一つにゴーレムは該当していた。
 この世界において、ゴーレムは簡単に作成できる。

 材料は素体となるアイテム、そして魔石。
 錬金術を扱える者が材料の魔石に特別な術式を刻み、素体となるアイテムの上に置いて魔力を流す──これでゴーレムは完成だ。

 ならば俺も、と思いゴーレムを作った。

 持ち得る知識の中で最も複雑なゴーレム作成用の術式、そこに多種族から学んだ多重強化や刻印術などを乗せて作り上げた核となる部分を、アイプスル産の地面で生みだした新たなゴーレム……それがあれだ。

『GUGYA……GYAGYA、GAGAガガがが……』

 大きさはそれほどではない、むしろ人型にしてあるので通常のゴーレムとしては小型も小型、極小サイズである。

 上も下もついていない無性のゴーレムで、ショウとマイの間ぐらいの年齢をイメージして作成された。

 そんなゴーレムは今、エラーを起こしたかのようにガクガクと小刻みに揺れる。
 少しずつ濁った音声は澄んでいき、いつしか声は人間らしく変化していく。

「が、がが……あ、ああ……あ、うん。──よし、これで充分ですね」

 やがて声は人と見分けがつかない程に澄み渡り、子供らしい高い声色になる。

「初めまして、私のマスター。貴方によって造られたゴーレムでございます」

「…………すまん、状況を説明してくれ」

 ゴーレムへの最初の指示、それをゴーレム自身にゴーレムのことを訊くことであった。
 だって、想定外だったんだもん。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「──つまり、術式を入れすぎてエラーが起きた。だけどそれは偶然、星脈の場所でゴーレムを作成していたから変化が起きたと」

「そうなります。星脈に蓄積された力を取り込み、このような状態に至りました」

 説明を聞いてみた。
 要するに、よく分からないってことだ。

 複雑なエラーが偶然変化を起こし、星脈から何かを引き出して……云々と。

 よし、思考放棄だ思考放棄。
 さすがファンタジーの一言で充分だな。

「基礎知識は収集済みです。私は以降、この世界の守護に入りますが……外敵が存在しませんので、呼びだしていただければいつでも応じます」

「そ、そうか、ありがとう。これからよろしくな──『カエン』」

「かえん……ですか?」

「お前の名前だ。るつぼの堝に堰き止めるって意味のえんそくの堰で『堝堰』だぞ。どうだ……気に入ってくれるかな?」

 アイプスルという器を、外敵から守るという意味でこの名を与えた。
 少々恥ずかしいし、俺だけで名前を考えたことがないからちょっどクサい気もするが。

「っ……! もちろんでございます! マスター、本当にありがとうございます!」

「お、おう……気にいってもらえてこっちも嬉しいぞ」

 涙を流す機能も、いっしょに手に入れたのかな?
 歓喜に目から滴を零すカエンに、そんなことを思った。


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