虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
会いたくなる人
可能な限り情報を集めたが、結局タクマは『錬金王』に関する情報を知らなかった。
まあ、『超越者』の一人だし、何か偽装用のアイテムでも持っているのかもな。
と、いうわけで探すなら自力で探す必要あり、どうしよっかなー。
「うーん……まずは錬金について、おさらいしておくか。会ったときにどれだけ凄いか、それが分からないのもあれだしな」
錬金は何度もやっているので、仕様は把握している。
なので、基礎知識だけは持っているぞ。
錬金術とは、魔方陣と魔力を用いて行う合成術である。
物体Aと物体B、それらを魔方陣の上に置いて魔力を籠める。
それが合成を行うのに充分な魔力量と明確なイメージがあれば、魔方陣の中で二つの物が一つになる。
……当然、合成する物があまりに悪いと、どれだけイメージがよくとも、失敗するんだけどな。
前に失敗した時は、黒焦げのナニカができました。
「魔方陣が複雑であればあるほど、合成できるアイテムの数が増える。俺の知り得る知識の中で、最大は五つまで。『錬金王』だというなら、たぶんもっと同時に合成できるはずなんだ……やっぱり会いたいな」
普通の者よりは多いという自負はあるが、それでも:DIY:の力に追いついていない。
最低でも十、そうでなければ求めているアイテムの作成はほぼ不可能。
どうにかするにも策が無い。
『超越者』の中でも錬金に関する情報を尋ねるのならば……やはり錬金の王である『錬金王』だけ。
知識だけあっても、錬金術は魔方陣が無いと合成ができない。
「せめて十個用の魔道具があれば、そんな必要も無かったんだけど……」
錬金術の説明、その続きを行おう。
魔女が大釜を使って何かを煮込む、そんなイメージ写真を見たことはないだろうか?
EHOには、錬金釜と呼ばれる魔道具が存在する。
錬金釜の中にアイテムを入れ、魔力を籠めると合成される。
ここまでは先ほどまでと同じ説明だ。
錬金釜には、錬金に関する補助機能が付いている。
魔力の消費を抑えたり、同じ物を大量に生産できるようになったり……優れた物では全自動で生産が可能になる。
合成が行える物は錬金釜に収まる物、おまけに錬金釜用の魔方陣の用意が必要となるのだが、それでも全自動で生産を行えるため、俺もポーションなどの消費アイテムの生産にはそれを使っている。
繊細な扱いをしながら錬金を行わなきゃいけないアイテムの場合、錬金釜を使うと品質が劣ることがあるらしいがな。
「錬金、か……。そういややっぱり、エリクサーがあるよなー」
不老不死に繋がる薬剤。
賢者の石をも触媒にし、生み出される錬金術の高みの一つ。
「不老不死、なのかな?」
会えない時間が想いを高める、物凄く会いたくなってきたな。
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